兵庫県の斎藤元彦知事に対する元県民局長の告発文は、地元兵庫県のみならず、全国的に大きな関心を呼び、今メディアで大きく取り上げられている。元局長は、斎藤知事のパワハラや違法行為を告発する文書をメディアや県議員に送っていた。斎藤知事は、パワハラ疑惑や物のおねだりについて、当初「ウソ八百」とか、「事実無根」と完全否定していた。その後元局長は内部情報を外部に漏らしたことは、公務員条例に違反するとして懲戒処分を受けた。
一昨日開催された百条委員会に当の元局長が呼ばれ、説明する段取りになっていたが、元局長はその直前になって抗議のために自ら命を絶った。この告発文には、斎藤知事が企業から贈答品を受け取ったり、部下に対してパワハラを行った声の録音もある。県の調査では、すべてが事実ではないと結論づけたが、依然として、タカリ行為やパワハラぎわくが強い関心を集めている。
斎藤知事に対する辞職要求が高まる中で、片山副知事が辞職を決断した。しかし、知事は決まり文句のように「与えられた職責をきちんと果たして行くことが、自らに課せられた責任である」と述べ、辞職を強く否定した。県庁舎周辺では辞任を求める県民の抗議のデモが行われている。県職員の4割が加盟する県職員労働組合や、選挙で支援した自民党県連会長も辞職を要求している。普通ならこの空気は知事にとって四面楚歌である。
かつて、こういう形で辞任要求が知事にぶつけられたケースは知らない。元々斎藤知事は、政治家としてスタートしたわけではない。いわゆる秀才コースを辿り、東大経済学部卒業後総務省に入省し、エリート官僚への道を踏み出した。その後大阪府へ出向した。
しかし、斎藤知事を巡っては、知事就任早々から知事としての資質を問う声が県庁内で聞かれたという。最初のつまづきは、コロナの対応だった。選挙公約で、重症病床の倍増と対策に前向きだったが、いつの間にかそれは忘れ去られてしまった。ワクチン問題などもないものとして無責任を現実のものとした。
特に、厳しく批判されているのは、部下に対するパワハラである。エリート・コースを何不自由なく歩き、総務省では人事畑を歩いて地方自治体へ天下りしたために、上から目線の世間知らずのまま知事になってしまった。ニュースで知るパフォーマンスだけでも、あまりにも人間性において県民の長としては、未熟だと言わざるを得ない。権力を笠に行動する知事のパワハラ行為は、周囲が手を付けられなかったのだろう。こういうエリート意識が強く、パワハラ行為を止められない知事では、最早県民はもとより、県職員もとても付いていけないのではないだろうか。
百条委員会の結論がどういうものになるか、現状では不透明であるが、それによっては辞めざるを得ない立場に追い込まれるのではないか。