イギリスにご滞在中の天皇・皇后両陛下の公的、私的な動静がテレビで細かく伝えられている。チャールス国王より国賓としてガーター勲章を授与され身に付けた天皇は、堂々とにこやかに対応され、現地でも好意的に受け取られているようだ。昨日は、国王のお招きによる午餐会や晩餐会が開かれ、その場に応じたお召し物を身につけられたお二人の姿はズバリ決まっていた。天候が良かったせいもあり、滞在ホテルから会場であるバッキンガム宮殿への日英国旗が掲げられた道筋には、大勢のイギリス人や日本人の姿が見られた。
天皇は23年前ご訪英の折は、ちょうど皇后がご懐妊され、ひとりでの訪英となった。しかし、今回は皇后ともども国賓として招待され、チャールス国王からは「英国へお帰りなさい」と日本語で話されたり、国王と仲睦まじく話されていた様子を拝見するにつけ、すっかりこの厳かな雰囲気に溶け込み、両国ロイヤル・ファミリーの交誼は深まっていくものと信じている。このような席に日ごろよりモラルの伴わないトランプ前大統領が、もし座ったら、さぞや場違いのイメージとなることだろう。
世界でも王室や皇室は段々減り続けている。実際私が海外武者修行に出かけ始めた1966年から、訪れた国の中でもエジプト、エチオピア、イラン、ギリシャなどが王政を廃止している。その中で長い歴史と伝統を誇るイギリスと日本が華々しく厳かな情景を演出することが出来ることは、両国独自なもので国民としても誇らしいことであり、同時に品位を感じる。残りの2日間を、天皇も皇后もともに学んだオックスフォード大学を訪問されるようだが、是非懐かしい地で、思い出に浸り有意義なひとときをお過ごしいただきたいと思う。
さて、心温まる国家の交流が伝えられる中で、昨日中国の江蘇省蘇州市内で日本人学校のスクールバスが中国人の刃物を持った男に襲われ、日本人母子の他に、案内係の中国人女性がケガをした。
蘇州市は上海市の近くにあり、約1千3百万人の人口を抱える中国4番目の都市で、西條八十作詞、服部良一作曲の名曲♪蘇州夜曲♪で李香蘭(山口淑子)が唄って日本でも有名になった。私も1度だけ市内の寒山寺を訪れたことがある。現在は日本企業の数も多く、約5千人の日本人が生活している。傷つけられた子どもが未就学児であったこともあり、日本人社会では少なからずショックを受けている。地元の中国人住民らからは同情されているようだ。その後犯人は警察に逮捕されたが、事件の動機とか、認否については警察など公的な筋からは詳細は伝えられていない。中国政府の報道官も遺憾の意を表明した後に、偶発的な事件だと切り捨てるように言っただけだった。政府としては外国人を傷つけたことにあまり関与したくないムードである。メディアでも報道されていないようで、政府の意図が感じられる。被害者の気持ちを察してもう少し思いやりのある言動が出来ないものだろうか。多分今の中国政府の本音であり本性であろう。