一昨日訪英された天皇、皇后両陛下のロンドン到着後のご様子や、お二人それぞれのオックスフォード大学留学時代の映像が、写し出されて微笑ましく思える。6泊8日の日程中にエリザベス女王とフィリップ殿下が眠るウィンザー城内のセント・ジョージ教会へお墓参りもされる。また、バッキンガム宮殿で開催されるチャールス国王ご招待の晩餐会へ向かう際には馬車で通られるので、沿道には両国の国旗が掲げられている。スナク政権下のイギリス政界はやや不安定であるが、そんな空気も一掃する温かい歓迎ぶりである。第2次世界大戦中のしこりもあって、一時はやや疎遠だった日英皇室は、イギリスのエドワード皇太子が英国皇室で初めて来日されて以来150年が経ち、今では友好的な皇室関係が保たれている。両陛下の訪英が、一層両国の友好に貢献されるよう願っている。
さて、このところコロナ禍の影響も薄れ、加えて円安の恩恵もあり、海外から日本を訪れる観光客が再びもとに戻り、3月以降の3か月は、毎月3百万人を超えるインバウンド客が日本を訪れている。日本にとっては大きな外貨獲得で国家の財政面でも大きく貢献している。
しかし、コロナ禍前から言われていたように、観光客が数多く訪れることにより都市によってはオーバーツーリズムと呼ばれる観光公害が観光地に大きな陰を落としている。通行人が増えて車も人も思うように通れず、市民がバスに乗り難くなり、ゴミも散乱して街の美化も損なわれているのが実情である。それは、日本ばかりでなく、世界的観光地でも同じ現象に悩んでいる。イタリアのヴェネチアのように地域を限定して入域税を徴収するところも表れている。
日本で最もオーバーツーリズムに悩まされているのは、世界遺産でもある古都・京都である。ここでは祇園の舞妓さんが、写真を撮ろうとする外国人観光客に追い回されて困惑している図が見られる。最近になって世界遺産・姫路城が外国人観光客に対する入城料値上げの検討を始めた。現在の入城料は、千円であるが、外国人には約4倍強の30US㌦を考えているようだ。姫路市の取り組みに対して、腰の軽い吉村洋文・大阪府知事が大阪城もやったら良いと浮かれている。
しかし、唐突な値上げは一筋縄では行かない。ある大学教授は、二重価格を設定する国は、外貨を稼ごうとする発展途上国や新興国で、日本のように円安に苦しむ国がこれを実施すると、外国人観光客から多くのお金を取ろうとするとか、なぜ外国人だけが料金を高く支払わなければならないかと、誤解されたメッセージが世界に発信されるので慎重であるべきだと言っている。また、別の専門家は、外国人だけに税金のような形で徴収するなら、法の下の平等をうたう憲法14条や、各国との間で結んだ租税条約に盛り込まれた無差別条項に抵触する可能性があると警告している。
現実に二重の入場料を徴収しているマチュピチュや、タージ・マハールを訪れた時は、現地で外国人用パッケージツアーに参加したので、入場料がいくらか知らなかったが、前者では現地の人は約5千円、外国人は約1万円、後者に至っては、インド人は100円足らずだが、外国人は約20倍もの2千円も支払わなければならないという。
これらの二重価格制については、多くの問題があり、そう簡単に結論の出るものではない。ただ、便乗値上げや、二重価格制を取り入れることだけは、慎重に、かつ良識的に判断することを求めたい。国としてもいずれ他の観光都市へ広がる問題なので、すべてを自治体任せにせずに、国が相対的に、前向きに関わるべきであろう。
さて、今日は暑かった。東京都内の最高気温は33.4℃で今年最高だった。国内の最高は一時千葉県の牛久で36.4℃と発表されたが、その後栃木県佐野市の36.6℃と修正された。しかし、牛久市というのは確か茨城県内の市である。当初間違いではないかと思っていたら、千葉県市原市の牛久という地区というからややこしい。国内のみならず、世界でも今年は熱波がやって来て、インドやアラビアでは50℃を超えたというから想像もつかない。毎年恒例のサウジアラビアのメッカ巡礼は、5日間で2百万人が訪れ、51℃を超える灼熱により1,300人を超える死者が出たという。春夏秋冬が夏夏冬冬となり、これからの熱波寒波による厳しい気候変動が心配である。