インドの「世界最大の選挙」と言われる大型総選挙に、漸く決着が付いたようである。なにせ広大な国土に9億7千万人もの有権者がいるので、選挙自体に時間がかかる。昨日一斉に開票し、モディ首相の与党インド人民党はかなり票を減らしたが、先ずは与党連合として過半数の議席を維持したので、引き続きモディ首相が3期目の首相となる。但し、与党議席は前回より大分減らして厳しい政権運営になる。国内には物価の上昇、若者の失業率の高さなど難問を抱え、イスラム教徒などとの共存も思うように行かず危なっかしい。
インドは近年人口増により昨年中国を抜いて世界1の人口を抱えるようになった。それに歩調を合わせるように、海外資本を受け入れるなどして国内経済発展に力を入れ、国内総生産(GDP)は、2025年には22年にドイツに追い抜かれ3位から4位に転落した日本を追い抜くと見られている。27年には3位のドイツをも追い越して中国、アメリカに次いで世界3位になると予想されている。途上国だった国が急速に経済的に成長を遂げると、それに伴い国内に難しい問題がいくつも発生する。国際NGOオックスファムは、インドについて、「人口の1%がインドの富の4割を保有している」と公表し、同時に人口の2億3千万人弱が貧困層として暮らしている現状に、格差是正のための富裕層への課税強化を実行出来るか否かが問われていると提言した。インドにとって経済発展の恩恵を国民が等しく受けることが出来るかどうかが、今後インドが成長への大きな課題となるであろう。
インドに引き比べて日本の経済成長はあまり捗々しいとは言えない。その原因として考えられるのは、専門家は設備投資と技術進歩の停滞があると述べているが、最大の原因は少子高齢化現象にあると思う。少子高齢化が少しでも是正されないなら経済発展のキーである若年労働者の不足や、設備投資と技術の進歩について死にもの狂いで向き合わないと、かつて世界を驚嘆させた戦後の経済発展を遂げた日本は取り残されていくのではないかと些か気がかりである。
国内経済の停滞もさることながら、日本は政治の劣化が夥しい。あまりにも低レベルの政治にはうんざりする。今の日本が経済的に停滞しているのは、国会議員をはじめ多くの政治家の責任でもあると思う。今政府と野党の間で政治改革を巡るやり取りが行われているが、その中心が政治資金規正法改正案を巡る話し合いで、与野党が合意していた筈の衆議院採決が一夜にして先送りされた。特に、自民党と公明党、日本維新の会の駆け引きがまるで猿芝居である。よくぞこんな低レベルの騙し合いが出来るものだ。岸田首相が当初自民党内の批判を覚悟のうえで、公明と維新に妥協した。それが自党内で反発が大きく、維新の要望を受け入れないとした。これに維新は烈火の如く怒り、今や国会どころか政党間の局地戦に発展し、それを立憲民主党がはやし立てている有様である。まったく国民の声を無視して勢力争いをやっているのだから、手に負えない。これが今の低レベル政治家の実態なのである。それでも何とか同法案は衆議院特別委員会で可決された。しかし、パーティー券を購入した人の公開基準額を現行の20万円超から5万円超に引き下げ、政策活動費のすべての支出を対象に、領収書などを「10年後」に公開としたようだが、なぜ発生時点で領収書公開が出来ないのか。疚しい点がたくさんあるからであり、10年後では議員当人があの世で健在かも知れない。馬鹿々々しいにもほどがある。
こう言ってはどうしようもないが、今の国会議員は私利私欲に駆られて国会で遊んでいるだけで、国家、国民のことなんてまったく考えていない。
そこで熱くなった頭を冷やすために、今朝の朝日「天声人語」の冒頭文を紹介しよう。「JR大和路線の路線図をじっと見る。奈良駅の一つ先―おお本当だ。郡山、大和小泉、法隆寺、王子(、)三郷、河内堅上(かわちかたがみ)。お気づきだろうか。連なる駅の名で五七五七七になる。日常のなかに隠れたリズムの楽しさだろう~」