6228.2024年6月1日(土) 「陪審員制度」を印象付けたトランプ氏の悪徳

 日本では自民党派閥による裏金問題が非難され、広く社会問題化している。一方、現代日本の宗主国?アメリカでは、11月の大統領選を前に共和党のトランプ前大統領が立候補に意欲満々であるが、長年に亘ってスキャンダルなど多くのトラブルを抱えている。一昨日その抱え込んだ裁判のひとつである、不倫したポルノ女優に口止め料を支払い、不正に会計処理した偽証を問われていた裁判で、ニューヨーク地裁の陪審は、有罪の評決を下した。量刑は7月11日に決まる。但し、仮に実刑が言い渡されても大統領選に立候補することは可能だという。

 30日の夕刊の一面トップに大きく米紙の「Guilty(有罪)」と書かれた見出しが出ていた。アメリカの大統領経験者が刑事事件で有罪の評決を受けるのは史上初めてである。このような「悪徳の権化」のような人間に対して非道徳的で破廉恥な罪状により、12人の陪審員全員が「有罪」の評決を下した。至極当たり前である。それにも拘わらず、この評決を知ったトランプ氏は、さらさら反省の気なぞなく、「不正で恥ずべき裁判だ。本当の評決は11月5日(大統領選投票日)に国民によって下される」と怒りを込めて発言した。それでもなお不満やるかたない表情で「私は無実だ。私たちの国では今、不正が行われている。これはバイデン政権が政敵を傷つけるためにやったことだ」と自らの悪行を隠し、自らの非をライバルに転嫁して、まったく評決を認める気がないようだ。

 その評決から間もなくして、控訴するとの意向を表明した。驚くというより、今までにもアメリカ人が普通の常識とは異なる感受性を示すことに少し呆れていたが、それが如実に示される事実があった。それは、有罪評決直後にトランプ陣営に多額の寄付が集まったことである。これほどの罪を犯していながら支援する人が、国内には随分いるのだ。小口献金だけで、何と24時間で約83億円も集まったというから二の句が告げない。

 バイデン大統領もこれらトランプ氏の言動について「無謀、且つ危険で無責任だ」と非難しつつ、「法の上に立つ者はいないというアメリカの原則が再確認された」と冷静にコメントした。

 日本では近年アメリカとは異なる6人の裁判員と3人の裁判官が協議する「裁判員制度」が法令化され、少しは知られるようになったが、元祖「陪審員制度」が以前から定着しているアメリカでは、「全員一致」を求めるアメリカ特有の「陪審員制度」が定着し、図らずも今回のトランプ有罪評決により注目されるようになった。

 トランプ有罪評決を知り、つい学生時代に観た映画「12人の怒れる男」を想い出した。事前にこの12人の男というのは、西部劇に出るカウボーイかと思い、同時に、どうして12人でなければならないのだろうかと疑問を感じた。そして映画自体には、著名な俳優が出演しておらず、ドラマはほとんど室内の議論に終始して、その主人公の建築家が説得する演技と迫力に感銘を受けたものである。映画では、12人中主人公だけが犯人の少年の無罪を信じて、他の11人の固定観念に固まった有罪派の一人ひとりを説得して、同意させたうえで一致して「無罪」と評決する。もう70年も前の古い映画だが、今でも時折想い出すことがある。それが、偶々トランプ大統領のような悪質な候補者の見苦しい猿芝居により見せてもらった。それにしても何と節操のない大統領候補者であろうか。そしてなおトランプ氏を大統領に押し上げようとするアメリカ人が多いことだろうか。これではアメリカも、アメリカ人の評価も劣化する一方ではないだろうか。

2024年6月1日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com