6116.2024年5月20日(月) イランのライシ大統領、不慮の事故で死亡

 国のリーダー次第で国民の生活と安全は大きく左右される。その意味では、私利私欲の絶対権力を握った指導者に支配される国民は不幸極まりない。第2次世界大戦でナチズムのヒットラー総統の下で自由を抑圧されたドイツ国民や、今日では金正恩・朝鮮労働党総書記支配下の北朝鮮国民は経済不況による日常生活の不安におびえていることは明らかである。

 国家のリーダーには、こんな悲劇が襲うこともある。去る15日、スロバキアのフィッツォ首相が、銃撃を受け重態に陥っている。同首相は昨年9月に、ロシアが侵攻を続けるウクライナへの軍事支援の停止を訴え、議会選挙で野党を勝利に導き、首相に就任して間もなかった。だが、ウクライナへ同情的な国民感情を斟酌しなかった首相に対して、スロバキア国内には首相への非難が高まっていた。犯人は、反ロシア派の71歳の男だった。指導者は国の進路を決定する権限を持っているだけに、それが独裁的で非民主義的な場合には国際的にも大きな影響力を与えることが多い。それだけに反対派の国民からは、命まで狙われかねない。

 ついては、今朝のニュースでイランのライシ大統領搭乗のヘリコプターが悪天候のためにイラン山中で不時着し、山岳地帯ということもあり、思うように救出作業が捗らず安否が気遣われているという報道があった。午後になってイラン国営通信がライシ大統領は、同乗の外相ともどもヘリの墜落事故により死亡したと伝えた。イランには、最高指導者ハメネイ師がいて、その存在と権力の方が遥かに格上である。だが、政治的にはライシ大統領に全権を任されている。差し当たって大きな問題はないが、85歳のハメネイ師は高齢でもあり、後継者問題が懸念されている。パレスチナ・ガザ地区のイスラエル軍による攻撃以来、アラブとイスラエルの対立は、激しくなっており、ライシ大統領の言動が注目されていただけに、イスラム諸国にとっても頭の痛い問題となりそうである。

 そして、今日台湾では蔡英文総統に代わって新たに同じ民進党の頼清徳氏が総統の座に就いた。中台の協力を強化して現状維持の方針を進めると述べた。

 台湾の総統と言えば、初代の蒋介石総統を想い出す。1911年に辛亥革命を成功させた孫文の後継者として、中国国民党を指導し、1928年南京に国民政府を樹立したが、第2次世界大戦後毛沢東の中国共産党に内戦で敗れ、1949年台湾に逃れた。以後台湾で国民党総裁として最高指導者だった。

 その蒋介石は1975年に亡くなるまで国家元首の地位にあった。偶々亡くなる数年前台湾を旅行中にその姿を近くで目撃したことがある。阿里山へ登山電車で向かう前日の午後、台中市内の小高い山へ登って下の方を見下ろした時だった。物々しい軍の警備兵に囲まれた高級車からひとりの病衣を纏った老人が出て来て、周囲を歩いていた。その人物こそが蒋介石だったのである。そこには、同じような高級車が別に1台停車していたが、ガイドによると要人警護の際暴漢からの襲撃を避けるためどちらに総統が乗車しているのか、迷わせるためのカムフラージュ用だと教えてくれた。警備兵は我々にも銃で近寄るなと威嚇したが、こんなシーンも今になってみると懐かしい。

 頼清徳新総統は、前任者同様に台湾海峡を挟む中国に対して現状維持を訴えているが、海洋進出など徐々に国際法を犯してまでも他国領土へ進出しようとしている中国と向かい合うのは、かなりの責任と重荷であろう。新総統は総選挙では民進党の票を大きく減らし、蔡英文前総統に比べても信任票は下落した。人間的には清新な人物に思えるので、これからも日米と手を取り合いながら台湾の存在と主権を守っていけるよう努力して欲しいと願っている。

2024年5月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com