6110.2024年5月14日(火) 92年前の明日起きた5.15事件を忘れない。

 1878(明治11)年の今日、内務卿大久保利通が明治天皇に面会するため参上の途上で、待ち伏せしていた6人の男たちに馬車から引きずり降ろされ暗殺された。大久保は、幼いころからの盟友だった西郷隆盛を西南戦争で死に追いやったことから、不平士族の恨みを買っていた。6人の男は、旧石川県人で、加賀藩石川は規模が大きく政府は石川の勢力を削ぐ目的で、旧越前国を福井県に、旧越中国を富山県に分割したといわれている。そのかつては巨大だった石川県が、不幸にも今年正月早々能登半島地震で甚大な被害を被ったのは、何か不思議な縁を感じる。

 今世界中から注視、非難されているイスラエルが独立宣言を行い、イギリスの委任統治から新ユダヤ人国家として建設されたのは、1948年の今日5月14日である。そのような国家にとって大切な日に、ガザ地区で無抵抗なパレスチナ住民を引き続き攻撃している。これでは1国家として存在する意味がないではないだろうか。

 また、南米のパラグアイが宗主国スペインの手を離れて独立したのも、1811年の今日である。

 そして1932(昭和7)年の明日は、戦前の昭和の軍国主義が進行する中で、農村の貧困、政治の腐敗に怒った海軍青年将校らが右翼と手を組み、首相官邸を襲い犬養毅首相を惨殺した5.15事件が勃発した。以後政党内閣の時代が終わり政治は軍部によって奪われ、日本は軍国主義の道をひた走りに上り詰めて行った。

 ここで敢えて明日の5.15事件について取り上げたのは、近年この事件がメディアによって伝えられなくなり、触れることがなくなったからである。これは、同じように4年後陸軍青年将校が起こした2.26事件に比べても話題に上がることは少なくなった。2.26事件も中国への侵略の一歩となったクーデターであるが、日本の民主主義を躓かせた事件だった。軍部の力が強まり日本は軍国主義へ傾斜して、挙句に太平洋戦争へ飛び込むことになってしまった。これら青年将校らのひたむきな気持ちが思想的に問題あるにせよ、当時の政府が民主義的施策を講じておれば、軍国主義へこれほど傾くことはなかったと思える。

 現在中高生の日本史の教科書でどれほどこれらのクーデターが紹介されているかは分からないが、もし教科書で習うことがなければ、この事件は日本人の歴史から消えてしまうだろう。そしてそれは、敗戦を反省することなく過去の歴史を忘れるということであり、再び同じ道を歩む可能性がある。その意味では、メディアがこの事件を取り上げることなくやり過ごしているのは、これらの事件を反省することなく見逃しているということでもあり、ジャーナリズムとしては無責任であり、極めて危険なことである。

 太平洋戦争へ進んだ道筋には、これら2つの事件が大きなきっかけになった。それだけにこの92年も前の明日起きた5.15事件を知り、おさらいすることが必要である。それにしても、メディアというのはどうしてこのニュースを復習する意味でも、テレビや新聞で国民に知らせようとしないのだろうか。斬新なニュースバリューがないと考えるなら、それは現代のあまりにも恵まれた環境と境遇に浸り過ぎたが故に、臨場感的感覚が呆けてしまったとしか思えない。

 メディアは、世界各地で戦争のような残虐で衝撃的な事件ばかり追いかけて、過去における身近に起きた大切な歴史的痕跡と視点を見失っているように思える。もう少し身近の重大な出来事を反省しつつ掘り下げて考えてみることが必要ではないかと思う。

2024年5月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com