6010.2024年2月4日(日) 日鉄のUSスチール買収に米国人の屈辱感

 11月に行われるアメリカ大統領選で、共和党ではいくつかの州で予備選が始まり、トランプ前大統領が圧勝して選挙選をリードしている。トランプ氏が多くの訴訟事件を抱えながらも圧勝するというのは信じがたいことだが、それがトランプ氏の得体の知れない人物像なのだろうか。ただ、その内の1件でも有罪が確定すれば、そうは問屋が卸さずトランプ氏の思惑通りにはいかないようだ。

 一方の民主党は、遅ればせながら昨日初戦の予備選が南部サウスカロライナ州で行われ、これというライバル候補者がいない中でバイデン大統領が圧勝した。民主党としてはバイデン氏に勝ってもらいたく、戦術でもかなりのおぜん立てをしているようだ。サウスカロライナは人口の1/4が黒人の州で、バイデン氏はここで圧勝した。これにより黒人票の獲得に期待が持てると踏んでいるようだ。これから白人の多い地域へ選挙戦を移すにつれて、圧勝の流れを続けていきたいとの考えである。

 バイデン大統領は、最終的に民主党候補者に指名された後に、対トランプ作戦を練ることになるが、トランプ氏のなりふり構わず強引な言動を表に出す作戦に、バイデン氏がどう対応するかである。しかし、いずれも指名権を獲得して再びこの高齢ライバル同士の対決になった時、どうしても2人の年齢が気にかかる。アメリカ大統領は世界でも最激職であり、80歳を超えた彼らが全身全霊で4年間全力投球できるだろうか。特にバイデン大統領は、来年1月の大統領就任時には82歳となる。4年間無事務め上げれば、退任時には86歳となる。テレビの画像を観ていても、歩き方がどことなくたどたどしく健康問題が気になる。老体を引きずって世界の各地を巡ることが出来るだろうか。現状では、すでに選挙戦の火ぶたは切られた。11月にはまず2人の高齢者による決戦が行われるだろうが、黙って彼らの言動を注目しているより他に手段はない。

 そのアメリカで現在対日経済問題に発展しかねない事象が起きている。それは日本製鉄が世界最大の鉄鋼メーカーであるアメリカの「USスチール」を買収することに、アメリカの鉄鋼業界の労働組合が猛烈に反対しているのだ。日本製鉄は、すでにUSスチールと買収で合意したと発表した。その買収額が実に2兆円だという。この買収について、トランプ前大統領は「私なら即座に阻止する」と買収を認めない考えを明かした。バイデン大統領も、買収に反対と労働組合の後押しをすることを言明した。連邦政府議員の間でも反対の声が強い。買収が大統領選の主題のひとつになっているのだ。

 これには、アメリカ国民が抱いている世界最大のアメリカ企業が乗っ取られたとの屈辱の印象がある。損得勘定よりもプライドの問題だと思う。況してや世界最大の経済国家が成長著しいが敗戦国である日本経済に屈するとのイメージが受け入れられないのだろう。日本製鉄側は、アメリカに対して巨額の投資をし、資金を持っていき技術も送るし、労働組合との協約は100%守ると主張し、この買収によってアメリカがマイナスになる心配はまったくないと言っている。名を取るか、実を取るかの受け取り方だと考えれば良い。それでもアメリカ人にとっては、自国の最大企業が日本に屈した現実は、素直に納得出来ないのだろう。やはり国際商取引は、中々思うようにはいかない一面がある。

2024年2月4日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com