5996.2024年1月21日(日) 月面着陸成功は金星。元大関の横綱戦勝利は「金星」か?

 能登半島地震やら、国会議員の裏金問題やら暗い事件が多い中で、昨日久しぶりに明るいニュースが飛び込んできた。まるで雲をつかむような話ではあるが、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)が昨年9月に打ち上げた無人の月探査機‘SLIM’が、ほぼ予定通りのコースで月面着陸に成功したそうである。探査機の月面着陸は、ソ連、アメリカ、中国、インドに次いで世界で5番目であり、もちろん日本にとっては初めてである。ただ、若干のトラブルが生じたようで、探査機の側面に取り付けられた太陽電池パネルの発電が出来ていないために、代わりに使用したバッテリーが尽きると不具合が生じる可能性があるようだ。

 それにしてもこういう地味で科学の進歩を後押しするようなトライアルが成功した意味は大きい。ヨーロッパの主要国辺りがまだ開発途上にある中で、科学国家日本の探査機が月面到着した成果を広い意味で科学のみならず、実践的な実験に生かして欲しいものである。

 ついては、今大相撲初場所の最中で、結構盛り上がって連日「満員御礼」の垂れ幕が下がっている。世間的に大きな問題ではないが、私には以前から気になっていたことがある。以前このブログにもおかしいのではないかと疑義を取り上げ、NPO紙に寄稿したこともある。

 それは、「金星」についてNHKの実況放送で間違って伝え、相撲協会の役員らもあまり気にかけていない様子にいつもながらおかしいと思ったのである。今場所の横綱照ノ富士が負けた相撲である。昨日まで照ノ富士は5勝2敗であるが、その2敗はいずれも偶々敗れた相手力士が平幕だったことからNHKは相手の力士の「金星」だと叫んだのだ。

 本来「金星」とは、初めて横綱と対戦した平幕力士が横綱を破った時に、類稀なその勝ち星を誉め言葉「金星」と呼ぶ決まりになっていた。ところが、近年この「金星」が大安売りされ、平幕力士が横綱を破れば、すべて「金星」と呼ぶようになったようだ。今場所2日目に横綱照ノ富士が若元春に敗れた時、実況アナは若元春の金星と伝えたが、若元春は先場所まで関脇を務め大関の地位を狙っていたが、運悪く先場所負け越して平幕まで落ち、しかもこの日は横綱と3度目の対戦だった。更に昨日も価値の下がった「金星」があった。平幕ではあるが、かつて優勝を飾り大関を務めていた前頭4枚目の正代が横綱を破った瞬間、アナは鬼の首とも獲ったかの如く「金星」と叫んだ。正代は、7年前の名古屋場所で横綱日馬富士を破って以来の2度目の「金星」だそうである。

 しかし、横綱に勝った平幕力士の努力を評価しないわけではないが、どうにも納得出来ない。かつて大関の地位にいて今こそ平幕だが、横綱を破ったからと言って「金星」と大騒ぎするようなことだろうか。しかも今朝の朝日新聞には見出しには「これぞ正代 金星の両差し」と正代を持ち上げ、更に小見出しで「元大関が会心の相撲で金星を奪い取った」と、鐘や太鼓で大騒ぎであるが、元大関が横綱に勝ったからとてそんなに大げさに称賛することだろうか。メディアが記事を盛り上げるためにそう表現しているだけではないか。

 少々「金星」が安売りされていると思い、最近の辞書で調べたところ「金星」とは、平幕力士が横綱に勝った場合を指すと書かれていた。辞書には、「初めての対戦で勝った場合の白星」とは書かれていなかった。時代の経過とともに変わってしまったことと、相撲協会の相撲を盛り上げるために「金星」を甘く過小評価するようになったのだと思う。こうして、その時の時代環境によって、言葉は少しずつ迎合的に変化するものだということを、図らずも大相撲の勝敗によって知らされることになった。

2024年1月21日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com