5995.2024年1月20日(土) お話にならない裏金問題の落としどころ

 政治資金問題は、東京地検特捜部が昨日一定の結論を出した。ただ、裏金を受け取った大勢の議員の中で、逮捕された議員は池田佳隆衆院議員ただひとりである。他には、安倍派の会計責任者、大野泰正参院議員と秘書、二階派の会計責任者の4人が在宅起訴され、谷川弥一参院議員と秘書、二階元幹事長秘書、岸田派会計責任者が略式起訴となったことで捜査の手はこれ以上広がりそうもない。特捜部も現職の国会議員にお縄頂戴とするのは、中々難しいのだろうか。この結果立件された安倍派、二階派、岸田派は派閥解散を決めた。首相の派閥と有力な二階派、この問題の発端となった最大派閥の安倍派が解散することを決定したことを受けて、自民党内はこのまま派閥解散の流れになるかと思いきや、安倍派に次ぐ多くの所属議員がいる麻生派、第3派閥の茂木派は、何を考えているのか、このまま自派の派閥を今後も継続するという。麻生自民党副総裁なぞは、むしろ派閥は人材育成に大切な組織だと、派閥によって裏金問題が生まれた責任を一顧だにしないようだ。麻生氏は派閥所属議員の育成より、自分自身をもっと成長させることに気を遣った方が良いのではないか。

 22日に「政治刷新本部」が中間報告書を出すそうだが、その成果にはとても期待が持てそうもない。この辺りの感覚が、国民とは大分ずれている。今日の朝日朝刊は4面もこの問題が占めているが、その大見出しを見ても「安倍・二階・岸田派を立件」、「立件の3派閥 解散決定」、「組織的裏金 立証に壁」、「脱派閥 自民ちぐはぐ」、「派閥解散 野党『目くらまし』」等々である。社説も「自民裏金問題 政治責任不問にできぬ」と自民党の行動に厳しく批判しているが、いつも逃げ切る国会議員が、今度もするすると火中から逃れてしまうのだろう。

 さて、朝刊の片隅に小さく目立たない記事があった。余程注意深く見ないと見落としてしまう。それはイエメンで取材を予定していたジャーナリストの常岡浩介氏が、外務省から旅券の返納命令を受けたことに対して取り消しを求めた昨日の裁判で、東京地裁は常岡氏の請求を棄却したという。またかという思いである。2021年にフリージャーナリストの安田純平氏が、シリアで40か月拘留された後に帰国したが、以後外務省は安田氏の旅券発給の要求を度々拒否している。こうして行動的で有能なジャーナリストの海外における取材活動に日本の外務省は制約を加えているのである。憲法で保障された移動の自由を両氏にたいしていずれも制限している。これでは激しい騒乱の地や、戦地へ取材する人がいなくなるではないか。これが厳しい現地の実態が日本人観と臨場感を伴って伝えられない原因である。

 実際今戦闘の激しいパレスチナ・ガザ地区へ侵入してイスラエル軍の戦闘行為を間近に取材している日本人はいない。NHKでも現地から生中継とは言うが、現場から少し離れた場所から日本人駐在員が生中継していて、一歩踏み込み銃弾飛び交うような危険地域で生中継しているのは、NHKが現地で雇用した現地人である。これでは日本人の視点、考えとは異なり、日本人が知りたい日本人ならではの細かく臨場感に溢れた情報は得られない。外務省のスタンスは、ジャーナリストが危険地帯へ入り、身柄を拘束されるような事態は後々面倒なことになるので、事前に避けたいというのが本音であろう。役人の都合だけしか考えることしかせず、もう少し太っ腹になれないものだろうか。これでは日本人はいつまで経っても、臨場感のある真実に密着することは不可能である。

2024年1月20日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com