5973.2023年12月29日(金) 冷酷で無慈悲な戦後の政治家

 今年も残り少なくなった。会社や役所は昨日が仕事納めとなり、故郷の実家へ帰る人たちで新幹線や高速道路は混雑が始まった。荒れた国会、というより自民党内の現在の裏金騒ぎは年末年始の間にどういう結末になるのだろうか。後から後から新たな疑惑の国会議員が現れる。自民党安倍派の大野泰正・参院議員が、5年間に政治資金パーティの最高額とも言える5千万円ものキックバックを得て収支報告書に記載していないことが分かり、昨日東京地検特捜部が事務所、及び自宅に、そして今日岐阜の事務所に家宅捜索に入った。大野議員は世襲議員で、実は元自民党副総裁だった大野伴睦氏の孫だったことを初めて知ったが、世襲らしくあまりの無神経に呆れている。祖父・伴睦氏は良くも悪くも一世を風靡した大物代議士だった。東海道新幹線が敷設された当時は、まだ田園だった新羽島駅開設を強引に行い、力ある政治家のワンマンプレーは一時話題になったものである。政治漫画に、新幹線が新羽島駅を通過する場面では、「バンボク!バンボク!」という汽笛が聞こえると皮肉っぽく描かれていたことを良く覚えている。あくどい行為は、脈々と祖父から孫へ引き継がれたようだが、孫の政治家としての実力は、まったく未知である。昨日のブログにも書いたように、世襲議員にはもう少し制約を課してハードルを上げる必要があると思っている。

 そして、戦後世代が多くなった国会議員の間には、戦争の恐ろしさとか、厳しさを知らず、遺族や戦争に悲惨な思い出を持つ人々に対して露骨に無情さを表す無神経な言動が見られるようになった。その典型のひとつとも言えるのが、福岡高裁の判決に従い、昨日沖縄辺野古移設計画埋め立て工事を沖縄県に代わって国が代執行したことである。国が地方自治体の事務を代執行するのは、後にも先にもこれが初めてである。そもそもこの移設計画は最初から沖縄県が認めず、政府は沖縄と充分話し合いをしようとせずに、司法の力に頼った挙句に法律上行けると強引に突き進んだものである。ここには、沖縄県民の声はまったく無視され、戦争で地獄絵図を見た沖縄県民の気持ちを逆なでして、アメリカ政府と米軍駐留軍の意向だけを斟酌した戦後世代自民党政権の無神経と民主主義軽視の気持ちが表れている。

 市中にあり危険な普天間航空基地を辺野古埋立て基地に移設させるにせよ、元々普天間はアメリカが占領し、米軍経費で整備したものである。近年は日本政府が防衛費予算の中で思いやり予算と称する支出援助を行っている。この辺野古移設経費もほとんど防衛費予算の中で工面される。

 アメリカ政府には、日本の防衛を代行してやっているとの傲慢な姿勢が強く、沖縄県民の感情はまったく頭の中にはない。岸田政権の閣僚には、戦後派らしく沖縄戦争の熾烈さと悲惨さがまったく分かっていない者が多い。沖縄へ足を運ぶ大臣も、回数も少なく、感情的な面を排除して書面上だけで決済を行っている。保守思考だった小渕恵三元首相や、野中広務・元自民党幹事長でさえ沖縄の苦難の歴史に思いをはせ、対話に心を砕こうとした。1996年「普天間返還」日米合意をした当時の橋本龍太郎首相も同じ気持ちだった。特に沖縄県の指導者らとは話し合いは欠かさなかった。岸田政権には、沖縄県との対話を「時間稼ぎ」だと否定している風潮があるというから、岸田政権と沖縄県民の間には、心の通い合いがまるでない。

 自民党政権がアメリカ政府に気を遣い、日本は多額の防衛予算を支出して、沖縄県民の気持ちを考えない状態が今後も続くことは、その結果として沖縄戦で多くの尊い命を落とされた沖縄県民に再び煮え湯を飲まそうとしていることになりはしないか。自民党の無情な沖縄観のせいで、現代の日本人は冷酷な民族になったと、後世の人びとから恨めしく思われるのではないだろうか。

2023年12月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com