5951.2023年12月7日(木) ドイツとアメリカの対イスラエル政策の変化

 イスラム教の過激派組織ハマスとイスラエルの戦争が始まってから今日で丁度2か月になった。日を追うにつれ双方の攻撃は激しさを増し、双方の死者は会わせて1万7千名を超えた。先月末から1週間の戦闘休止はあったが、パレスチナ・ガザ地区住民の願いや国際社会の希望はむなしく、休止延長という願いが叶わず、ガザ地区には攻撃が加えられ、市街地区は残骸化している。

 先月9日ドイツで「水晶の夜事件」発生85年を迎えて、ナチス下で犠牲になったユダヤ人に祈りを捧げた。私が生まれて1週間後のことである。85年前ナチス隊員がユダヤ人を襲撃し、礼拝所シナゴーグも破壊され、多くのユダヤ人が殺害された。割られて散乱したガラスが月の明かりで水晶のように光ったという事実に則り、そう呼ばれるようになった。それが端緒となり、ホロコーストを引き起こすことになり、600万人のユダヤ人が虐殺される運命となった。

 今ドイツでは、第2次世界大戦後ドイツのイスラエルに対する謝罪が、イスラエルへのトラウマとなり、しばらくして両国の同盟関係が結ばれた。ドイツのショルツ首相は、「イスラエルの国家の存立と安全のために立ち上がることがわれわれの使命だ」と今後もイスラエルに寄り添っていくと述べた。だが、このショルツ声明に対して、このところあまりにも強引なイスラエル政府寄りの方針に、ドイツ国内でも批判の声が挙がっている。イスラエルに対する負の姿勢として、G7主要7か国の首脳として、初めてイスラエルを訪問したショルツ首相は、ネタニヤフ・イスラエル首相に対して、「ドイツがイスラエルの安全のために取り組むことは国是である」と表明し、ドイツ国民を困惑させている。

 ドイツ国内ではイスラエル軍のガザ地区への激しい攻撃により民間人の犠牲者が増えるにつれ、政府の姿勢に対して反発の声が上がり始めている。ハマスのロケット攻撃が始まって1週間後のドイツ人の「国是」に対する世論調査によると、政府のイスラエル寄りの姿勢を正しいと肯定的に受け取る国民は、2/3の66%だったのに対して、市民の犠牲を伴うイスラエルの軍事行動に対しては、61%もの国民が正当化できないと判断している。最近の調査は手元にはないが、恐らく前者については1/3程度に下がり、後者については80%前後にまで上がっているのではないだろうか。

 世界で初めてイスラエルの建国を承認した、親イスラエル国家アメリカでも、同じような現象が見られる。更に国民の1/4を占めると言われるキリスト教福音派信徒は、イスラエルを支持している。10月7日にハマスによる大規模攻撃直後に、バイデン大統領は、「アメリカはイスラエルとともにあり、確実に支援していく」とショルツ首相と同じような主旨の言葉を述べていた。礼拝では、牧師が「私たちが祝福されるのはイスラエルとユダヤ教のおかげだ。イスラエルに寄り添おう」と呼びかけてもいた。しかし、今やアメリカ各地で異変が起きている。若い世代の間では、イスラエルではなく、パレスチナを支持する声がじわじわと広がっている。因みにCNNが10月中旬に行った調査によると、年代層による賛否に大きな差が生じている。「イスラエルの軍事的対応に完全に正当性があるか」との問いに対して、65歳以上の後期高齢者の81%が、50~64歳の56%、35~49歳は44%と年齢が下がるにつれてyesと答えた人が減っている。それが18~34歳になると実に27%の若者しか正当だと認めていない。

 これからこのままイスラエルが徹底した攻撃を続けるなら、国によって、また年齢層によってイスラエルへの支持者は益々減少することだろう。イスラエルもこの辺りの傾向を理解して対策を考え直すべき時に来ているのではないだろうか。

 今日は12月にしては珍しく、八王子市や府中市など東京都内でも最高気温20℃を超えたところがあったようだ。恐らくパレスチナ戦争の熱気が流れてきたのだろう。

2023年12月7日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com