6042.2023年11月28日(火) 日大大麻事件の泥沼化、理事会の内紛へ

 日本大学アメリカン・フットボール部員の違法薬物事件を捜査している警視庁が、大麻と認識していながら密売人から薬物を譲り受けたとして、また新たに3年生部員を麻薬特例法違反容疑で逮捕した。これで8月、10月に続き3人目の逮捕者である。こう度々逮捕者が出るようだと、正に「どこまで続く泥濘ぞ」である。大学の運動部としての存在の意義が問われ、存在自体が消滅し兼ねない。アメフト部の寮から麻薬らしきものが発見され、寮に住む部員らの無法が罷り通っていたことが次々に明らかにされている。

 その一方で監督すべき大学当局は、露見時の初期対応からその後の対応、及び対策が世間を納得させるような常識的なものでなく、理事会内の一致した管理体制に疑念を持たれている。ガバナンスの欠如とも言われる由縁である。流石に監督官庁の文部科学省は、来年度私立大学への助成金を日大に支給せず、日大が大学内の情報伝達や警察への連絡が遅れたガバナンス上の問題について、調査のうえ報告書を提出するよう求めた。大学のトップ組織である理事会を運営する林真理子理事長、酒井建夫学長、澤田康広副学長らの間に、対処方法や責任のなすり合いで意見が対立している。理事会として、林理事長に減給、学長、及び副学長には辞任するよう勧告した。ところが理事会内の言動を巡って対立が一層激化し、理事長がスポーツ競技担当の澤田副学長の責任を追及し、学長と副学長に辞任を迫り、これを副学長が納得しないと拒否した。

 そして、昨日辞任勧告の回答期限となり、副学長は学長とともに辞任勧告を受け入れると応えた。しかし、同時に副学長は、林理事長に対して辞任を迫るパワハラを受けたとして、1千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたのである。ここまで経営陣が対立するようでは、組織としての体をなさない。確かにアメフト部員の不祥事は続いたが、それを止めさせ、堅実な運営を図る手段を講じなければならない大学トップの組織が、こんな体たらくではガバナンスの欠如では済むまい。

 田中英壽前理事長の背任事件という不祥事の温床となった旧体制からの脱皮と決別を掲げて現体制はスタートしたが、新体制発足から1年余で再び組織の刷新を迫られる事態となった。その元凶ともなった澤田副学長とガバナンス欠如の責任を取らされ辞任せざるを得なくなった酒井学長にとっては、納得出来ず、悔やんでも悔やみきれない胸の内だろう。

 しかし、「日大理事長の職を面白半分で引き受けた」林理事長にしても、毅然とした理事長らしい行動が見られなかった。これまで組織体の運営、管理、監督の経験がなかった林理事長は、再々発足する日大を果たして立ち直させることが出来るだろうか。薬物事件や理事会の意思決定などの経緯を調査した、第三者委員会綿引万里子委員長は、先月31日の記者会見で林理事長と澤田副学長が対立し、組織内が内紛状態にあることについて、「今のような状態を続けていたら日大は再生出来ない」と厳しい見解を述べている。

 今一番悩んでいるのは、日大の学生たちだろう。就職活動中の学生は、希望の企業から大学名を尋ねられた時、自分が日大生であると話すことにためらいがあると述べていた。学生たちを指導、監督すべき立場の大学経営者が彼らを悩ませ、コンプレックスを抱かせるような状況を生み出しては、酷というものではないだろうか。こんなふしだらな理事会が存在することで、マンモス大学・日大の再生は可能なりや?

2023年11月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com