5912.2023年10月29日(日) 海外武者修行論は、成長環境によって異なる?

 今朝の朝日新聞に国末憲人・論説委員が興味深い論説を書いている。命題「日曜に想う」で述べたお説に、興味を覚える反面賛否相半ばの感想を持った。「田舎者よ、海外を目指せ」というテーマでで書いておられるが、氏は瀬戸内の山間の集落に生まれ育って高校卒業するまで、外国人を見た記憶がほとんどないということから、自らを「田舎者」と下がって謙虚でありながらも、やや自虐的に書いている。私でも小学生のころは終戦時から房州の田舎の漁師町にしばらく住んでいたが、米軍兵士を含めて何人かの外人を見ている。そのような外国とはまったく触れ合いのない集落で成長された環境のせいか、国末氏の主張は、2010年にノーベル化学賞を受賞した、高校の先輩・故根岸英一博士とも意気投合した私の持論「若者よ!海外へ出でよ!」とは、少々趣が異なるようだ。

 まず、国末氏が若い内に海外へ出て積極的に外国と生で接触し、新しい発見をして臨場感によって本質を感得せよという点は私も同感であり、それほど考え方にずれはないと思う。しかし、基本的に異なる点は、ご自身の成長環境から自分を田舎者と卑下して、田舎者こそ先ず海外へ出てみるべきだという意識と、私は誰もが若い内に海外へ出るべしと主張し、特に成長過程や環境には拘らないということである。

 国末氏は、終始海外取材では洗練さで自身が引け目を感じたとか、たどたどしい英語とヤボな振る舞いを恥じたという。それだけに氏は田舎者はゼロから外国に接した経験上、初心者の立場を理解しつつ、外国について平易に語ることが出来ると妙なプライドを持っている。最後にオチがあった。「海外を目指せと言いたい。何より、私自身が自らにそう言い聞かせている」。これほど自虐的にならずとも、若者よ!海外へ飛び出せ!だけで充分ではないかと思う。

 さて、パレスチナ・ガザ地区の攻防が泥沼状態になってきた。イスラエルはガザ地区の陸上侵攻を準備しながらハマス壊滅のためにガザ地区へ侵攻すると公言していたが、その言葉とは裏腹に度々空爆を試みて、今日まで3夜連続で越境攻撃を行い、ガザ北部は、多数の死傷者が出て街は瓦礫と化している。イスラエルのあまりの非人道的行動について、イスラエル側とハマスを支援するアラブ諸国側に沿った和解案、戦争の一時停止に関して国連の緊急特別会合で、27日漸く決議案を採択した。これまで度々否決されていたものと大きな差はない。採択されたその決議案とは、「敵対行為の停止につながる人道的休戦」を求めるというものである。

 但し、この決議案が提案通り実行されるか否かは、極めて不透明である。というのは、決議案に拘束力はなく、加盟国193か国の内、当事国イスラエルとその支援国アメリカが反対したからである。賛成は120か国、反対14か国、棄権45か国、無投票14か国だった。アメリカの言うままの日本政府や、韓国などは、アメリカに逆らうことも出来ず、さりとて国際世論も考えて棄権した。反対したイスラエルの言い分は、「国際社会の大半は、イスラエルより『ナチスのテロリスト』を支持した」と述べ、同じく反対をしたアメリカは、「テロ攻撃の加害者を名指ししないのは言語道断。人質になっている無実の人びとへの言及もない」と身勝手過ぎる言い分である。それぞれ一理はあるが、現実に現在食料、電気、水、医療品などが欠乏し、死ぬか生きるかの瀬戸際の人びとの苦悩について何らの配慮もなく、自らの言い分だけを述べている。これでは問題が解決する見通しは立たない。あと数日もすれば、ガザ地区に生き残っている人がいなくなるのではないだろうか。恐ろしい世の中になったものである。

2023年10月29日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com