5910.2023年10月27日(金) 前首相急死、外相・国防相解任は習体制に歪みか?

 今朝のテレビ・ニュースで中国の李克強・前首相が深夜に心臓病で急死したと知り驚いた。享年68歳だった。2012年発足の習指導部で共産党内序列は習主席に次ぎ2位となった。そして温家宝氏から首相を引き継ぎ、爾来今年3月まで10年間に亘り中国政府のトップを務めていた。だが、それ以前には習近平・国家主席のライバルとされていたが、李氏が担当して実績を上げていた経済部門を習主席に譲る格好となり、習独裁体制が強化された。一応李氏は健康上の理由で首相を辞め引退したと言われていたが、習主席は自身と距離のある李氏を退けたと受け止められている。

 中国政府の要人では前記のように、李克強・前首相は引退し、今朝急逝したが、実は他に外相と国防相の2人の大臣が、今年になって就任間もないにも拘わらず最近になって立て続けに更迭されている。

 ひとりは泰剛・前外相である。昨年12月に王毅外相の後任として抜擢されたばかりで、しかも習主席に近い期待の若手と見られていたが、駐米大使時代にテレビ局女子アナウンサーとの不倫が暴露されたこともあり、今年7月に解任され、再び王毅氏が返り咲いた。

 もうひとりは、3日前の24日に国防相の地位を電撃的に解任された李尚福・国務委員である。同時に中央軍事委員会委員からも外されることになった。昨年まで軍の調達部門のトップにいたが、装備品の購入にからむ疑惑で捜査を受けていたとも言われていた。就任以来多くの国々の防衛関係者と会談し、国際会議にも出席し、ロシアのプーチン大統領とも会見をしていた。だが、外相同様に唐突に失脚する羽目になった。

 これら中国の外交、防衛のトップとしてその重職を担ってきた2人が、はっきりした理由もなく相次いで解任されることは極めて異例であり、3期目に入った習近平指導体制にとっては、盤石と見られていた体制に異変が起きている可能性があるとして内外から注視されている。

 中国にとっては、こんな話もある。先般北京で巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際協力サミットフォーラムが開催された。「一帯一路」については、グテーレス国連事務総長が、国連で「多くの発展途上国が債務に溺れている」と苦言を呈したばかりである。初めて中国を訪れ、このフォーラムに出席したロシアのプーチン大統領が習主席と会談し、両国の政治的な信頼は深化したとお互いの結束を誓い合っていた。しかし、ウクライナ戦争で多額の戦費を注ぎ込んだロシアは、国家財政がかなり厳しくなった。今まで以上に対中債務が増え続けている。実際中国政府の一帯一路資金の3分の1をロシアに融資してきたが、ほぼ全額が不良債権化しているとの欧米筋からの情報がある。ロシアは返済を石油や天然ガスの輸出で賄うつもりのようだが、中国にすべてを見透かされた状態にあり、これから中国はロシアに対してかなり強気の姿勢を示すのではないかと見られている。

 だが、盤石だった習体制下において人事面で体制内部の不満が表れ、また不動産業を主に中国経済の悪化が伝えられ、香港法人の投資銀行幹部が中国本土から出国を禁止されることにもなり、外国への門戸を閉じようとしているのではないかと懸念の声が出ている。難問を抱えた習近平主席が今後どう国内経済のかじ取りを行っていくのだろうか。しばし、目が離せない。

2023年10月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com