5909.2023年10月26日(木) 首相演説、パレスチナ紛争と米銃乱射事件

 23日の臨時国会で岸田首相の所信表明演説に対する各党党首の質問は、内閣支持率が低落傾向にあるだけにかなり厳しいものだった。それはむしろ当然であるが、昨日の参議院本会議では身内である自民党の世耕弘成幹事長の質問が、自民党員としては稀なほど首相演説の内容につき鋭い追及だった。

 支持率の低空飛行について首相の心境、リーダーとしての姿勢が示せていない、首相の「決断」と「言葉」に弱さを感じる、「還元」の意味がよく分からない、等々かなり辛辣な質問だった。自民党内でも驚きがあったようだが、よく言ってくれたとの声も聞かれる。これらは、首相が蒔いた種であるが、ここまで突き上げられるのは、首相の言動、特に政府のやるべきことが充分伝わっていないことを示しているからでもある。首相もこれらの厳しい指摘を受け止め、強い意思を持って政策を実現する姿勢を示すことが重要だと応えていたが、意思があまり強そうにも見えない岸田首相に、それをやり遂げ、実績を示すことが出来るか、鼎の軽重を問われるところである。

 それにしてもこういう質問の仕方は、これまで野党のスタンスだったが、それを与党内の実力者が行うことに若干従来の国会質疑が異質になったような感がある。国民感情としては、両者の質疑を形骸化させることなく、政策を実現することによって国民に返してもらいたいと思う。

 中でもちょっと引っかかったのは、世耕幹事長が、「首相のいう『還元』の意味がよくわからない」と質問していたが、「還元」とは正確には、どちらかと言えば、あまり良い意味には使われない。改めて手元の辞書を見ると「白紙還元」とか、「もとに返す」、科学的用語では「酸素化合物から酸素を奪うこと」など、このような質疑ではマイナスイメージが強い言葉だと思う。言葉の意味はどうあれ、私は個人的には、現在物価高騰などで家計は大変だと思うが、国家の家計簿も累積赤字が溜まりアップアップ状態で、多少税収増があったなら、国民に「還元」することも重要ではあるが、その増収分をまずは国家財政の赤字を埋めることに使って欲しいと希望している。

 一方で気になっているパレスチナ・イスラエル紛争であるが、一昨日グテーレス国連事務総長が国連の場で、パレスチナ・ガザ自治区でハマスとイスラエルの軍事衝突を巡り、イスラエルによる空爆と封鎖が続くガザ地区で国際人道法違反が見られると前置きしたうえで、発言したことがイスラエルの憤りを買い、謝罪と事務総長辞任要求へ発展している。事務総長の発言の要旨は、「ハマスの攻撃が理由もなく起きたわけではない。パレスチナの人びとは56年間も占領下におかれている。彼らは自分らの土地が入植地とされ苦しめられてきた」とパレスチナにやや同情的なコメントを述べた。この発言に対して、イスラエルのエルダン国連大使は、烈火のごとく怒りを表し、この発言はテロを容認するものだと述べ、猛反発している。

 今ガザ地区へのイスラエル軍の地上攻撃がいつ行われるか、緊張したシーンが続いているが、同時に現地では避難民に対する食料品と物資が枯渇状態に陥り、避難民は餓死の危機を迫られている。漸く援助物資がエジプト側から不十分ながらも搬入されたとは言え、とても多くの需要を満たすには不十分である。爆撃により、すでにパレスチナ側で6,500人超、イスラエル側に1,400人超の死者を出している。グテーレス発言以上に、現地では人道上の飢餓が残忍な形で現れないことを祈るばかりである。

 さて、パレスチナ地方において同情を買うような悲劇的惨状とは真逆で、人を無闇に殺害する銃乱射事件が、今朝アメリカ東部メーン州で発生し、少なくとも22人が死亡したと伝えられた。またかというのが率直な感想である。今年に入ってからアメリカ国内で1度に4人以上が殺害された銃撃事件は、何と565件に上がっている。一昨日までに銃で死亡した人は、自殺者を含めて驚くなかれ、35,200人を数える。このようにアメリカ人は人を殺害することに抵抗がなく無神経になり、国は銃規制の出来ない殺人国となり、世界中で戦死者が出ても平気でいられる野蛮人であることが益々明瞭になった。そのアメリカに属国化した今の日本が、アメリカ政府の押し付けで敵基地攻撃能力を高め、軍事費を増額するのは当然なのかも知れない。日本も殺人王国に加担しつつあるということになる。憂うべき情けないことである。

2023年10月26日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com