一昨日国連を舞台に2つの大きな動きがあった。
そのひとつは、国連安保理事会がシリアの化学兵器を国際管理下で廃棄させる決議案を全会一致で採択したことである。化学兵器をシリア国内で使用されたとのシリア政府側と反政府側の相互非難に加えて、シリア政府が化学兵器を使用したとしてシリアへ軍事介入を主張していたアメリカと、それに反対するロシアの対立がどうなるか注目されていたが、この状態では直接介入はしないが、もしシリア政府に化学兵器を使用したとの事実が確認されたら躊躇なくアメリカ軍の介入を認めるとの妥協案をロシアも呑みそれが採択されたのである。
問題は仮に化学兵器の使用が禁止されても内戦それ自体が終わらなければあまり意味がない。相変わらず激しいテロで国内では多くの死傷者が出ている。国連もこの内戦をどうやって解決するのか、答を出さなければならないと思う。
もうひとつの動きは、これまで43年間に亘って国交断絶状態にあったアメリカとイランの両首脳が電話で直接対話をしたことである。これにはその前日両国の外相、ケリー国務長官とイランのザリフ外相が舞台回しを行って、電話であるにせよ長い間の断絶から話し合いの糸口を開いたのは歓迎されるべきことである。いずれオバマ大統領とロハニ大統領が直接会って会談することになるだろう。
そもそもアメリカとイランとの国交断絶は、1979年のイラン・イスラム革命時にイランの過激派がテヘランのアメリカ大使館を占拠し52人を人質に取り、がん手術のためアメリカに入国していたパーレヴィ前国王の身柄引き渡しを求めた事件にまで遡る。その後、イランが核開発を行い、世界の安全を脅かすとして核開発中止を求める欧米の声を無視して反米的行動を取り続けたことが、アフマディネジャド前大統領の強硬な姿勢によりエスカレートし解決の道が見つからなかった。それが、今年8月に行われたイランの大統領選挙で穏健派のロハニ氏が新大統領に選任され、俄かに和平ムードが醸成されるようになった。そして一昨日の首脳対話である。
まだほんの和平への入り口であり、予断は許さないが、アメリカとイランの歩み寄りは国際平和にとって大いに歓迎されることである。今後両国大統領同士の直接会談が早く行われることを期待したい。
今年はイラン・イスラム革命時の人質問題を扱った作品「ARGO」が、アカデミー賞作品となって注目を集めた。私もこの映画を鑑賞したが、ドキュメンタリー性を期待し過ぎたせいと、その10年以上も前に訪れたパーレヴィ時代の匂いを嗅ぎ出そうと考え過ぎたせいだろうか、ちょっとぴんとこなかったような気がした。
ただ、アメリカの強力な同盟国で、イランにとって不倶戴天の敵であるイスラエルが、アメリカ及び世界に向けてイランの歩み寄りは油断できないと警告を発しているのが問題の複雑さを象徴しているようだ。