5902.2023年10月19日(木) 不祥事続きの大学体育会運動部

 このところ大学体育会運動部内の不祥事が立て続けに表沙汰となり、運動部存在の意義自体が問われている。

 先般日本大学アメリカンフットボール部の一部員が、大麻服用・所持の疑いで逮捕され、他にも大麻を所持している部員がいるのではないかと疑われたが、他にはいないということで話は終わった。ところが、その部員と合宿所で同室の他の部員が大麻を購入した疑いで逮捕される事態が発生した。日大理事会内ではこれまでの扱いと対応を巡って責任のなすり合いのような事態にまで発展し、林真理子理事長が澤田康広副学長に辞任を求めたことまで公になった。学生アメフト界の強豪として知られる日大アメフト部も、今やその存在すら危うくなっている。

 そこへ近畿大学剣道部で、部員同士の暴力沙汰から1人の部員が死亡するような事件まで起きた。その他にも大学内の暴力事件などが散見される。

 スポーツの強い大学でこれらの不祥事が続出するのは、専門家である大学ジャーナリストの石渡嶺司氏によると、スポーツで一芸に秀でている高校生が、スカウトされて大学に入学した後に正選手になれず、いくら頑張っても上に行けないと分かると大学での目的を失い、落ち込みが激しくなるからだという。特に一芸を見込まれ特待生待遇で入学した場合は、部を辞めるわけにいかず、そのまま堕落して違法行為に手を染めるリスクが高いという。実際大学の授業には出席せずに、合宿所とグランドを往復しているだけで、学業成績二の次という選手がスポーツ強豪大学にはかなりいるとの話はよく耳にする。

 石嶺氏の話では、アメリカには全米大学体育協会(NCAA)という組織があり、ほとんどの大学が加盟していて、一定以上の成績を上げなければ、その学生は練習禁止、チームの対外試合に出場禁止の措置を科せられるというシステムになっているという。学生として身に着けるべき教養を学ぶ目的を持たせているというから文武両道が徹底している。このような個別の学生の成績を外部の組織が把握するシステムは、所属する大学の枠からはみ出して、聊か勇み足のような気もするが、考えてみれば、そのくらい大学生としての良識、学力を習熟させることを大学は求められているわけである。

 実は、日本でも2019年にNCAAを模した「大学スポーツ協会」という組織が発足したそうだが、加盟する大学は少なく、各大学の運動部の活動を制限するような罰則は設けられておらず、自主性に任せている。自校の学生の学業を他の外部組織に規制されることは大学自体が潔しとせず、不本意というのが日本の大学の考えだろう。「学問の自由」、「学問の独立」を主張する各大学にはそれなりの言い分があるだろうが、最高学府学生としての能力や矜持を持たない学生が多いことも事実である。これを大学側として今後どう指導していくのか、対策を生み出さないと勉学にはまったく興味がなく、成績も上がらない多くの学生が大学から社会へ送り込まれては、日本社会もいずれレベルダウンしてインテリジェンスに欠ける社会となる懸念がある。

2023年10月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com