5883.2023年9月30日(土) 深刻な教員不足、自治体内で人事交流は?

 最近芸能プロダクション・ジャニーズ事務所のワンマン経営者だった、故ジャニー喜多川の幼いタレントへの長期に亘る性加害が明かされて大きな社会問題となっている。こんな時に、意外にも教育界でも教育関係者による子どもたちに対する性加害事件が、立て続けに明るみに出た。中でも現役の東京都内中学校長による生徒へのセクハラに至っては、これが教育者のやることかと呆れるばかりである。

 そんな教育界のイメージダウンと歩調を合わせるように、今全国的に教員志望者が減少して各自治体教育委員会ではその対策に頭を痛めている。例えば、東京都の2024年度の教員採用選考では志願者が過去最低だった昨年度を更に下回った。小学校教員の受験倍率は1.1倍だったという。これでは教員志望者のほぼ全員が採用されるわけで、その質の低下や、これからの教員不足が懸念される。志願者の中学高校共通の倍率は1.8倍だったそうだから、小学校の教員不足はより一層深刻な問題である。実際小学校では、担任としての教科指導の他に、教員は生徒とともに学ぶことや、日常のエチケット、クラブ活動、友だちづくり、悩みの相談ごと、交通安全、等々想定以上に生徒たちと接しながら多くの時間を過ごさなければならない。それに加えて、1学級の児童数を減らす「35人学級」の導入により、都教委は採用を増やす必要に迫られている。

 そこで窮余の策として都教委は2つの試案を考え出した。ひとつは、教員免許を持たない社会人に教員資格を与えることで、それも従来は40歳以上に制約していたが、これを今年度から25歳以上に引き下げたことである。もうひとつは、かつて教員として勤務した経験者を「カムバック採用」として採用したことである。

 小学校の教員については、私見で恐縮だが、アメリカの小学校を20年以上に亘り毎年見学した経験から言うなら、アメリカの教員は教育者というより、それ以前に子どもが大好きで子どもたちも先生を慕う空気があることである。教員らの子ども好きは微笑ましく、傍から見ていてもはっきり分かる。朝の登校時と学校からの下校時に、校門前で生徒と受け持ちの教諭との感情の籠った交流の情景は、お互いの感情が溢れていることを強く感じ、それは今でも印象深く残っている。その意味では日本の教員はどうだろうか。近年日本では子どもが好きな若者が減ったと言えないこともない。

 いずれにせよ教員になる以上、子どもたちを好きで親身になって教えてみたいとの真摯な気持ちがなくては「良い先生」にはなれないと思う。教員を目指す学生たちに良い教員になりたいと思わせる魅力が、今の教育制度や施設には欠けていることを教育委員会としても認識すべきだと思う。

 教員志望の若者が減ったという現実は、東京都ばかりではなく今や全国的な傾向である。全国の公立学校教員の24年度採用試験では、志願者が対前年▲4.5%となった。全国で6割近い自治体で減少している。最大の理由として挙げられるのが、長時間労働による過労であり、教員が増えないとすれば、今後益々長時間労働が多くなる恐れがある。

 ここは教員資格を持たない人材を教員として採用することを決めたことでもあり、一次的には不慣れな教員の指導力に目をつぶってでも、同じ自治体内から人材を教育庁へ配置転換する人事交流なども、視野に入れたらよいのではないか、検討してみては如何かと思う。

2023年9月30日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com