この2、3日どうもすっきりしないと思っている事象が2つばかりある。政治的なものと社会的なものである。
政治的なものとは、このほど発足した第2次岸田内閣の閣僚、及び副大臣、政務官人事の異様な点である。首相が組閣に当たっていつも述べるのは、適材適所、男女のバランスである。自身を含めて世襲議員が多いことや不都合なことについては一切語らない。ところが、いま文部科学省が東京地裁に過料適用を求め、来月には解散請求を求めると考えられている旧統一教会と接点を持っていた閣僚が、全閣僚20名の内4名もいる。一昨日公表された26名の副大臣の内11名、28名の政務官の中には15名も旧統一教会と接点がある議員がいる。悪名高い旧統一教会と関係があった議員が内閣の中にこんなに多くいるのは、普通ではないと思う。加えて、閣僚の中に5名の女性議員が含まれていたことに対して、首相は女性ならではの感性と共感力の発揮を期待していると語っていた。しかし、副大臣と政務官に選ばれた女性議員はひとりもいない。全員男性議員である。これでよくも組閣に際して男女のバランスなどと言えたものである。そして問題になりつつある旧統一教会と関係のある大臣、副大臣、政務官の多さについては、まだコメントを聞いていない。適材適所、及び男女のバランスを考えたうえで大臣、副大臣、政務官を合わせて30名もの旧統一教会色の強いお偉いさんが選ばれたということだろうか。
他方、社会的な問題で気がかりなのは、故ジャニー喜多川の性加害問題の解決へ向けた道筋である。ここへ来て大手企業などがジャニーズ事務所所属のタレントを自社広告に使わないとこれまでのやり方を見直す動きが急速に広まったことである。
外部の「再発防止特別チーム」のリーダーで弁護士の林真琴元検事総長がジャニーズ事務所に提言した項目の中で、再発防止の手段として社長の辞任、同族経営の脱皮を強調していた。7日のジャニーズ事務所の記者会見では、提言を受けて社長の藤島ジュリー景子氏が辞任し、新社長にタレントを引退して東山紀之氏が就任すると報告した。しかし、これは表面的に社長が交替しただけで、実質的には同族経営旧体制が刷新されたとの印象は極めて薄い。それは、ジュリー前社長が会社の全株を所有しており、社長を辞めても依然代表取締役として残るということと、東山新社長は、現状名義上は代表取締役社長であろうとも自社の株式を1株も所有せず、加えてこれまで企業経営の経験もなく、ジャニーズ事務所で前社長の監視下でどれほど東山色を出すことが出来るのか。「再発防止特別チーム」からは、同族経営の弊害と取締役会の活性化も指摘されている。ジャニーズ事務所は、現在社名の変更も考えていないという。汚れた性加害者の名前を恥ずかしげもなく会社の看板に引き続き掲げる経営方針には、ジャニー喜多川との縁をきっぱり切るという姿勢が見られない。
企業が自社の広告にジャニーズ所属タレントを使用しないようになり、その先には企業が民放テレビ番組のスポンサーから逃げ出すことにあり、こうなるとスポンサーに頼っている民放テレビ会社にとっても死活問題である。
それにしても出直した筈のジャニーズ事務所が、一向にリフレッシュした顔を見せないことには失望している。