5959.2023年9月6日(水) 懸念されるオーバー・ツーリズム

 5月に新型コロナ新規感染症防止上の位置づけが「5類」と緩和され、規制が緩やかになったが、マスクを着用する人の姿は大分少なくなった。ところが、メディアなどではあまり報道されないが、実際には新規感染者は着実に増えているようである。

 実は、観光業界ではコロナ明けを待望していたので、各地の観光地でも観光客が戻ってくるのを手ぐすね引いて待っている。懸念されるのは、日本のみならず世界的にも観光客がどっと押し寄せ、狭い観光地に観光客が溢れて引き起こされるオーバー・ツーリズム現象である。

 例えば、海外から最近こんなニュースが伝えられた。ひとつは、先月末オーストリアのハルシュスタットで過剰な観光客の訪問に対して、地元の住民が「生活空間を守る」と道路を封鎖して観光客が大勢で村を訪れることに抗議したというのである。30年ほど前に近くのザルツブルグを訪れた時、時間の関係で立ち寄るのを諦めたことがある世界遺産に登録された小さな村である。村民は僅か700人程度であるが、ピーク・シーズンには1日に1万人の観光客が押し寄せるという。村民の気持ちも理解出来る。

 もうひとつは、スペインのバルセロナである。ここには、観光客に人気の世界遺産・サグラダ・ファミリアがある。バルセロナは1992年開催のオリンピック以来年々観光客が増え、今ではスペインで最も観光客が多い都市となっている。同市の観光客数は年間約3,200万人で、市の人口(約160万人)の20倍である。バルセロナ市当局は、オリンピックを契機に観光客の増大を計画し、それなりの効果を上げたが、反面マイナス効果も生まれた。それは観光客が増えたことによる住民への諸々のダメージである。典型的なのは騒音問題と迷惑行為である。品行の悪い観光客が大声で騒いだり、民泊用マンションの共同施設などが壊されたり、禁止地区に無断で侵入したりすることだという。これらは、オーバー・ツーリズムとして近年急激に観光客が増えた他の都市でも見られる現象で、日本でもインバウンド業の発展とともに憂慮されていたことである。

 日本では京都市内などでもここ数年懸念されていたが、最近ではオーバー・ツーリズムが想定外のところで起きている。それは何と日本一の山・富士山で休むことなく一気に頂上を目指す軽装の外国人若者によりハラハラさせられる「弾丸登山」と、都内渋谷など繁華街の道路上におけるアルコールの立ち飲みと空き缶の投げ捨てである。これらの観光地以外にも早晩訪れる難題である。

 中々難しい問題を孕んでいるが、いずれのケースも国、或いは自治体として何らかの規制をせざるを得ないことだろう。実際昨日「弾丸登山」を試みたメキシコ人とアメリカ人の青年が、遭難騒ぎを起こした。幸いメキシコ人は下山し、もうひとりのアメリカ人は救助隊に救助されたが、今や身に迫った深刻な問題となった。このままオーバー・ツーリズムを放置するわけにはいかないだろう。外国人によるツーリズムも財政的には大いに歓迎されるところだが、このような問題が発生するようでは、手放しで喜んではいられない。

2023年9月6日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com