またメディアが一歩後退した。北海道新聞社が今月末を以て夕刊の発行を廃止し、今後は朝刊だけになると公表した。30年前のピーク時には、夕刊だけで約78万部を発行していたが、今年7月には23万4千部にまで減少した。そこへ製紙会社から新聞用紙代の大幅な値上げを求められ、更に新聞輸送代、夕刊配達経費などが重荷になって企業努力だけでは吸収し切れないと廃刊に踏み切った。創刊から81年目で夕刊の歴史を閉じることになった。社員の気持ちを思うと切なく同情するばかりである。これで2020年以降、大分合同、徳島、東奥日報、山陽、高知、熊本日日、静岡新聞に続き、北海道新聞社も夕刊を発行しないことになった。これら廃刊の原因は、基本的には近年若者らが本を読まなくなったことから新聞離れが進み、新聞社の経営にも大きな影響を与えることになったと言えよう。
そのひとつの現象が、新聞の編集面にも表れている。朝日朝刊の一面フロント・ページの対極面に当たる最終ページには、テレビ番組欄が掲載されている。このページは読者がテレビ番組をチェックするために必ず目を通す。それが最近某有名化粧品会社が一面広告を掲出することが多くなった。テレビ番組欄は内部紙面になってしまった。結果的にテレビ番組欄が捜し難くなってしまった。高額の広告料金を支払うスポンサーの要望を優先するあまり読者は二の次になってしまった。CM欲しさに経営の苦しい新聞社も泣く子とスポンサーには勝てなくなってしまったのである。
5月には101年間発行されていた「週刊朝日」が廃刊となった。朝日新聞社では、復刊を期して「休刊」と呼んでいるが、その可能性は薄いと見ている。一昨年1月には、毎日新聞社が41億5千万円だった資本金を恥を晒して1億円にまで大きく減資した。この減資により毎日新聞社は中小企業の扱いとなり税法上のメリットを得られるというが、いかにもみみっちい印象は拭えない。苦しい経営になりふり構ってはいられなくなったのだ。
新聞社同様にテレビ局の経営状態も芳しくないようで、今朝の朝日朝刊「多事奏論」によれば、愛媛県八幡浜市内に新聞社、テレビ局が開設していた支局が大分クローズしてしまったようだ。2年前には4局もあった民放支局が今では1局だけになってしまった。更に遡る今から15年前には、前記4民放支局の他に報道機関8社が記者を置いていたが、近年は地元の愛媛新聞、NHK、読売新聞の3社だけになってしまった。これは何も八幡浜市だけの問題ではなく、他の地方都市でも同じような傾向があるようである。このままだと地方の地方ならではのニュースが、これまでのように全国に届けられなくなる恐れがある。
かつては新聞記者になろうと希望していた時期もあった。それを諦めざるを得なくなった当時は随分悩んだものの、新聞だけは毎日読み続けて今日まで血とも肉ともしてきた。現在でも2紙を購読している。それらから得る知識、情報はどれほど今日になっても私の執筆意欲を掻き立ててくれているだろうか。知識と情報はテレビより新聞から得ることの方が多い。願わくば、これ以上メディアの衰退がないよう望むばかりである。