5953.2023年8月31日(木) 西武百貨店池袋本店、悲観的スト実施

 まさかと思われていた西武百貨店池袋本店が今日終日ストに入った。1962年の阪神百貨店のスト以来百貨店のストとしては、実に61年ぶりのことである。すでに昨日からニュースはメディアを通じて広く伝えられていたが、かつての西武鉄道の子会社がストに突入するとは全く想像外のことだった。以前とは組織、体制、経営方針が変わってしまったとは言え、かつて堤一族が支配した西武グループは、ストをしない会社として知られていた。

 私が社会人となった1963年当時からしばらく、鉄道業界では毎年春闘によりストを決行する国鉄の国労及び動力車労組と私鉄総連各社は、総連に加盟していない西武、及び加盟してはいるが総連に同調せずスト権を行使しなかった小田急は、1年中電車が停まらないと話題になっていたものである。西武百貨店はその当時西武鉄道の完全子会社で、社内ではストと言う言葉さえ聞かれなかったほどだった。それが、堤一族が西武鉄道の経営権を手放すにつれ、経営上大阪のそごうと合併して、更に経営権がそごう・西武からセブン&アイHDに移ったころから百貨店とコンビニの営業形態及び経営観の違いからか、メインのコンビニは伸びるが百貨店の経営が芳しくなくなった。百貨店の赤字も年々累積され、池袋本店のように過去4期連続で赤字を計上し、この間コロナ渦により営業収益が大幅に落ち、累積負債総額も約3千億円になり、そごう・西武の経営は苦境に陥っていた。

 セブン&アイHDも将来の展望が開けないと判断したのか、躊躇いもなくそごう・西武の全株式をアメリカの投資ファンド会社、フォートレス・インベストメント・グループに約2,200億円で売却することを決めた。フォートレス社は、ヨドバシ・カメラを池袋店の旗艦店と考えた。おしゃれで高級志向の西武百貨店は、その安売り家庭用量販店のイメージを嫌ったが、計画ではヨドバシの売り場シェア拡大により、これまでの優良店舗の面積が減って従業員の一部が解雇されることが明らかになった。組合はヨドバシ入店についてセブン&アイと話し合ったが、結局物別れに終わっていた。

 スト権の行使とは、一般的に労組が経営者と交渉し、交渉決裂の場合止むを得ず実行するものであるが、双方ともに失うものが多い。本件は西武労組が経営者であるセブン&アイと交渉しようとしても、経営者側は西武池袋店を売却することを決めていたので、セブン&アイにとっては大きな問題ではなく、前向きの結論は得られなかった。

 今日開かれたセブン&アイの臨時役員会では、改めて明日付でそごう・西武のフォートレス社への売却を確認し、決議した。これにより西武の従業員の何%かは、解雇されることになるだろう。

 地元商店会でも池袋駅東口に長年構えていた西武百貨店池袋本店のお洒落なイメージは、大きな存在感と吸引力となって地元へ多くの顧客を呼び込んでいたと認識し、評価している。豊島区長らもともども西武株売却に反対し、池袋駅周辺の商業発展のためにもこれまで通り西武百貨店が営業を継続することを望んできた。今それは儚い幻となってしまった。

 ところで、セブン&アイHDの祖業イトーヨーカドーの創業者・伊藤雅敏氏が掲げた同社の社是は以下について誓っている。

 ◎私たちは、お客様に信頼される、誠実な企業でありたい。

 ◎私たちは、取引先、株主、地域社会に信頼される、誠実な企業でありたい。

 ◎私たちは、社員に信頼される、誠実な企業でありたい。

 果たして世間を騒がせているこの一連の流れの中で、セブン&アイHDは社是を守って実行しているだろうか。

 今晩今年最高の満月が見られる筈だったが、空には雲がかかって見られなかった。

2023年8月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com