5841.2023年8月19日(土) 中国不動産業界が苦境に

 これまで中国の経済を引っ張ってきた不動産業界の経営不振が話題になっている。17日には、最大の不動産グループである恒大集団がニューヨークの裁判所にアメリカ連邦破産法の適用を申請した。これにより恒大がアメリカ国内に保有する資産の保全は可能になったが、1千件を超える訴訟を抱え、債権者との交渉は難航しているとみられ、再建への道筋は見通せない。いずれにせよ恒大集団が抱える負債は、何と約48兆円というから、日本の一般会計年度予算の約40%にも上る巨額である。その影響が中国国内はもとより日本にも及んでくると警戒されている。北京市内には、建設中に工事中止となった高層ビルが数多く放置されている状態である。販売されたものの未完成の住宅が72万戸もあるというから購入者としては生涯財産として入手しただけに諦めきれず、未完成住宅の周囲で「早く入居させて欲しい」とアピールしているようだ。この不動産不況は、恒大集団だけに限ったものではなく、上海の「碧桂園」などでも経営不振は明確に見られ、今年前半の最終損益は、1兆円前後の赤字に転落する見通しである。中国では不動産業界が占める国内総生産(GDP)の割合は3割を占め、これまで中国の成長をけん引してきた。どうしてこれほど悪くなるまで、業界はもとより中国政府は対応に手を拱いていたのだろうか。
 そもそも中国の不動産業がこのような危機に陥った大きな要因として考えられるのは、日本とは異なる「プレセール(事前販売制)」と言われる、住宅の完成前に代金の一部を支払う形態である。開発業者が回収した資金をすぐ次のプロジェクトの開発にまわしていった結果、実際の需要を投資が大きく上回るような結果になった。更に不動産が売れ続けることで地価も高騰し、値上がりを見込んで投資も更に加速する、という相乗効果の中で長らく中国の住宅市場は好調を維持してきた。しかし、これでは自転車操業と変わらない。いつ倒れるか分からない。

 これに対して中国政府も危ういと感じたのか、2020年8月に「三道紅線」という規制強化の方針を打ち出した。これは当初恒大集団のような巨大企業を対象にしていたのではなく、財政状況に不安のある不動産開発企業に対して銀行融資を規制するもので、これまでの過剰な不動産投機を抑制し、格差を是正することを目的にしたものだった。

 この結果、総負債比率等の基準に抵触した企業への融資に制限がかかり、かなりの不動産開発企業が債務不履行(デフォルト)に陥った。不動産業の不況は増大し、それはついに大手の恒大集団にも影響が及んできた。恒大集団もデフォルトに陥った。巨大企業のデフォルトはインパクトも大きく、不動産業全体を不景気に追い詰め、それは住宅産業以外の業種にも波及する中国経済にとって極めて重大な問題となった。

 今庶民を心配させているのは、未完成住宅問題である。建設工事は中止され、購入者は代金は支払ったが、住宅は手になく、加えてローンの支払いだけは要求され続けるというジレンマに捉われている。新築住宅の落ち込みで住宅販売額は前年同期に比べて30%近くも減少した。

 中国不動産業界の現状は、日本のバブル崩壊と同じような道を辿りそうだが、習近平独裁政権は、果たして不動産業界をこの窮地から脱出させることが出来るだろうか。

2023年8月19日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com