5840.2023年8月18日(金) アフガニスタンとイランの厳しいイスラム原理

 アフガニスタンでイスラム主義勢力タリバンが復権して、早くも2年が経った。それ以来同国では、国家の隅々まで徹底したイスラム化を進め、民主主義は国からその姿を消した。2001年のNY同時多発テロをきっかけにタリバンは、当時国際テロ組織アルガイダのビン・ラディンらを匿ったとしてアメリカ軍の攻撃を受け、政権を追われた。だが、徐々に勢力を取り戻したタリバンは、21年8月首都カブールを制圧し、アメリカ軍はアフガンからあっさり撤退してしまった。何故アメリカ軍はこのように無抵抗に撤退してしまったのだろうか。

 今政権を握ったタリバンは、国内でイスラム主義の原点に返るとしてイスラム化を徹底しているが、今日世界情勢から考えるとあまりにも他国の普遍的考えや体制とはかけ離れているように思える。とりわけ女性に対する差別や抑圧は、社会的理念や常識から考えて、今日の世界ではとても受け入れられるものではない。タリバンは独自のイスラム法の解釈に沿った国造りを進めているが、その典型として女性の教育や活動を制限することにある。最大の制約は、女性の学校教育を小学校までと規定したことであり、その他に女性は外出する際にはイスラム女性の衣装であるヒジャブを身に着けることである。化粧することも許されず、開業していた美容院はほとんど閉店させられた。

 女性に教育の機会を充分に与えず、小学校でしか学べないということは、文字の読み書きは何とか出来るが、考える力という人間にとって一番大切な思考力を養う機会を与えないということであり、社会から女性を遠ざけることである。これは国民の力を半減することになる。幼いころから女の子なりに将来の希望として、医師や看護師になりたいとか、学校の先生になりたいと考えていた彼らの希望を否応なく奪ってしまうことである。中にはこの苦悩から脱しようと国外へ逃げ出し、国外で生活している人もいる。だが、これとて誰でも出来ることではない。

 ある面では、01年からアフガンに駐留したアメリカ軍が監視した前政権が自堕落なためにタリバンに追い落された結果が、巡り巡ってこの有様となったが、それを見ていながら何ら有効な手を打たず、タリバンが再蜂起するや、アフガンの今後の発展とか、アフガンの問題点などに頓着することなくさっさと部隊を撤収したアメリカ軍の無責任ぶりも糾弾されなければなるまい。実際去る8日のアメリカ連邦議会下院の外交委員会で現地において負傷した兵士が、米軍の撤退は惨劇だったと証言しているくらいである。

 同じイスラム国の隣国イランでも同じような社会的問題が起きている。イランでは昨年9月ヒジャブの着け方が不適切だとして22歳の女性が逮捕された。ところが、逮捕後に収容所内でその女性が急死した。それが厳しい拷問と体罰によるものではないかとの噂が広がり、全国で抗議デモが起きた。こうした事件などを背景に、今イラン政府は女性が着るヒジャブを巡り新たな規制法案が審議されている。イラン政府は、新法案について「純潔とヒジャブの文化の促進を通じた家族の保護」というような都合の良い理屈を言っているようだが、アフガン同様に女性を家庭内へ閉じ込めようとしているだけだ。ヒジャブの色も黒一色系統でおよそ若い女性の好みには合いそうもない。女性を家の中に閉じ込め、外へ出る時には黒衣装を身につけさせ、国によってはほとんど顔も隠し人格まで覆い隠すような文化が、果たしてその国にとってどれほど有益なものだろうか。とてもイスラム国が、頑ななイスラム原理に拘る気持ちは理解出来ない。

2023年8月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com