5838.2023年8月16日(水) フランクリン北極探検隊失踪の謎

 去る11日は祭日「山の日」だった。今年の「山の日」は天候が山登りには適さなかったようだが、それでも多くの人々が各地で登山を楽しんだようだ。3日間の連休中に富士山へ登った人は約1万人と推定され、年々外国人登山者の数も増えているという。最近話題になるのは、富士山で「弾丸登山」と呼ばれる荒っぽい登山をする人たちで、他の登山者への迷惑にはお構いなく、ただ富士山へ登ろうとの一心で登山道で仮眠したり、休息を取る人たちである。彼らの間では山小屋に宿泊せず、一気に頂上を目指す登山者が多いという。また、他にもテレビを観てみると随分簡単な身なりで登山している登山者の姿も目に付く。彼らの服装はとても登山者とは思えず、まるで夕涼みの散歩スタイルである。こういう安易な登山スタイルは低体温症になる危険が多く、地元のガイド組合や観光協会でも一歩間違えると遭難の危険があると警告している。
 そういうやや安易な登山者に比べて、「NATIONAL GEOGRAPHIC」8月号特集記事に取り上げられたロマン溢れる「北極探検隊 失踪の謎を追う」は、真面目にテーマに取り組み写真と地図も併せて目新しい冒険ストーリーである。そもそもそのきっかけは、19世紀半ばにイギリス人ジョン・フランクリン隊長率いる探検隊が北極海で消息を絶った北西航路を、昨年「NATIONAL GEOGRAPHIC」チームが、その足跡をたどる航海に出たことにある。

 8月号は、その経緯を記録したものである。フランクリン隊長は、まだ誰も成し遂げていない北米大陸の北の氷に閉ざされた海域を抜けて太平洋に出る北西航路を切り開こうとした。これはアメリカから極東への新しい交易路として期待もされた。ところが、彼が率いた2隻の船、エレバス号とテラー号、そして乗組員128人が忽然と姿を消し、その後長い間記録等全体の詳細は分かっていない。「フランクリンの謎」と呼ばれているほどである。普通の海洋を航海するのとは異なり、北極海では氷山や氷柱が障碍となり、危険ですらある。船が氷山に囲まれその氷山が大きくなったら船はたちまち押しつぶされ破壊させられてしまう。そういう危険な北極海では夏の短い期間だけしか航行出来ない。2隻の船は1845年にイギリスを出港したが、2年目はほとんど氷に閉ざされていたという。4年目になって遂に船を放棄した。2隻の内エレバス号の残骸が2014年に放棄した島の反対側の海底で発見された。

 「NATIONAL GEOGRAPHIC」チームは、北西航路を辿って110日後にゴールであるアラスカ州ノームに着いた。彼らがどの程度当初の目的を果たせたのかは定かではないが、フランクリン隊長らと現地のイヌイットらとの交流などは想像することが出来る。とにかくスケールの大きい冒険旅行である。

 一見「弾丸登山」と変わらないと言えないこともないが、計画性や装備品、準備、アカデミック性などを考えると自ずから無謀な「弾丸登山」とはまったく異なることは歴然である。

 中々面白い特集読み物で、ロマンを感じた。

2023年8月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com