5807.2023年7月15日(土) 昔読んだ藤村の「夜明け前」を懐かしむ。

 昨晩NHKの「ドキュメント72時間」というシリーズ番組を初めて観た。昨日のテーマは「初夏の木曽路をゆく!深緑の木々に石畳の道」というもので、旧中山道の馬籠宿と妻籠宿間を行き交う人々の姿を72時間、つまり3日間観察したものである。

 木曽路と言えば、いわずもがなであるが、文学としては島崎藤村の名作「夜明け前」の舞台となった宿場街道である。高校生のころ同じ藤村の「破戒」を読んで藤村作品の魂と息に触れ、その後学生時代に「夜明け前」上下2巻を夢中になって読んだ。明治維新前後に社会が変革しつつある中で社会の荒波を乗り切ろうと努めたが、狂人となって獄舎で命を落とし哀れな生涯を果てた主人公である庄屋の当主・青山半蔵と、宿場町で生き残りのために苦悩した集落の住民を見事に描いた力作である。学生時代は登山クラブに所属していたこともあり、何とかして心を打たれた木曽の宿場街道、約8㎞を歩いてみたいと思いながら、志成らずサラリーマン時代に馬籠を訪れただけに終わってしまった。

 この地域もこのところのコロナ渦により観光客が大分減ったようだが、昨晩のテレビを観る限り、かなり訪れる人々は戻ったようだ。特に驚くのは、東京、京都、奈良のような人気観光地ならともかく、道路幅2mもないような田舎道を多くの外国人観光客が行き交っていることである。ある休憩所では、立ち寄った165人の内105人が外国人だという管理人の話には、驚くとともに意外感が強まった。しばしば紹介されるのは、馬籠と妻籠の2つの中心地であるが、木曽路はその間を結ぶ道幅2m程度のアップダウンのある道路である。感銘を受けたのは、案内所や休憩所などは、個人経営でなく集落の人々が、それも高齢者が輪番制で交代に仕事をしていることである。個人的に職業としているのではなく、地域を盛り立て多くの観光客を呼ぶための町づくりの計画である。あまりこういう例はないのではないかと思う。残念ながら私自身今や健康上からも訪れることが出来る可能性は消えてしまったが、こういう地域を守るやり方もあるのだなと感銘を受けた。

 ところで、首相の諮問機関である自民党税制調査会で怪しげな税制改悪案が考えられているようだ。その理由は、はっきりしなかった防衛費の大幅増額の財源として、先月防衛費増額をめぐる財源確保法なる得体の知れない法律を成立させた。法人税、所得税、たばこ税の3税を引き上げることを決めた。その他俎上に上がったのが、退職金増税である。次いで、配偶者控除、扶養控除、生命保険控除に手を付け、現在非課税の通勤手当や社宅の貸与などもリストアップされているらしい。通勤定期代なんて全額必要経費ではないか。お抱えの運転手付きの車に乗り、ガソリン代、高速道路代金まで国が支払っている?国会議員はどの面下げてここまで国民にたかり、苛めようというのだろうか。

 基本的には財務省の強い希望を聞いたようだ。鈴木俊一財務相の日ごろの自信なさそうな言動と答弁から察すると、税調と鈴木財務相は財務省の意向を抑えきれなかったようだ。増税談義も交わされたが、防衛費の予算編成上明確な財源が見つからずに、姑息にも税調は前記のような税金徴収を考え出したのである。岸田政権の国民への「増税・負担増」路線は留まるところを知らないようだ。

2023年7月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com