5800.2023年7月8日(土) 銃乱射事件、後ろ向きのお国事情

 先月27日、パリ郊外で17歳の少年が警察官に至近距離から銃で撃たれ、死亡する事件が起きた。その直後からこの警察官に対して群衆から強い非難が浴びせられ、警察はこの警察官を意図的な殺人の容疑で取り調べた。だが、この事件は人種差別だとして若者を中心に抗議が上がったのだ。フランス全土にデモの余波は広がり、3,500人の逮捕者を出した。射殺された少年は、北アフリカ系の移民で警察官から身分証明書の提示を求められ、咄嗟に逃走を図ったとして直後に銃により撃たれた。この背景には、フランス国内における人種差別、特にフランスが植民地化していた北アフリカの国々から多くの移民を受け入れていることにある。以前にも同じような人種差別が原因で大きなデモになったことがある。

 フランス政府はともかくデモを抑え込んだが、今後再び発生しないとは言い切れない。マクロン大統領は、ドイツを公式訪問の予定だったが、緊急事態と考えその予定を先送りした。フランスとしてはかつての植民地政策の下で抱え込んだ移民問題であるが、国としてそれなりに移民らに対して責任を持って問題解決に当たらなければいけない。

 フランスで人種差別問題が注目されるようになったが、多民族国家のアメリカでは差別による殺人事件は今では日常茶飯事となっている。アメリカでは、西部開拓史上自らの身を自らの力で守るという考え方が主流となり、銃砲類の所有も許されて来た。文化面ではかなり先端を歩む近代国家となったが、民主主義国家と自称しながらも個人が自らの身を護るためと称して、平素から自宅に銃砲類の所有を認め、侵入してきた外部の人間を射殺しても厳しく問わないようなことは真の民主主義国家と言えるだろうか。恐らくこんな野蛮な国は今日アメリカだけであろう。銃砲類は市内のどこにもあるということになった。これにより、身近に殺人事件を誘発する環境が出来上っている。毎年のように大小の殺人事件が発生するようになった。特に、小中学校のような教育施設内で残虐な殺人事件が勃発するようになった。

 今年も例外ではない。今年に入ってから銃が絡む殺人事件や自殺などで死亡した人は、今月5日現在で実に2万2千人に上がり、4人以上が死傷した銃乱射事件は350件以上も起きているという。普段から銃が身近になく、銃を握ったこともない日本人にしてみれば、想像もつかないことである。アメリカ人も現状をすべて肯定しているわけではないと思うが、武器保有の権利を憲法第2条で認めていることこそが銃乱射事件や、銃による殺人事件が多発する原因である。こんなことが分かっていながら、止められないのがアメリカ人の銃砲執着現象であり、アメリカ人の弱さであろう。銃所有の法規制が出来ない現状では、このまま毎年貴重な生命が無駄に失われていくことだろう。銃砲製造者の団体である全米ライフル協会が政治家に巨額の資金を寄付している現状では、政治家も簡単に銃規制を打ち出す訳にはいかないようだ。政治家たちが反省することもなく、メーカーが市場へ銃砲類を供出して、貴重な命が毎年失われていく。こんな国家が民主主義国の模範と言えるだろうか。

2023年7月8日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com