5787.2023年6月25日(日) 「ワグネル」に翻弄されたプーチン大統領

 今朝の朝日トップ見出しが「ワグネル、ロシア軍に反乱」だった。昨夕突然ウクライナ戦線にいるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者、エフゲニー・プリゴジン代表が、ロシアのショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を厳しい口調で批判し、もう我慢できないとばかりに武装蜂起を宣言し、これからワグネル部隊とともにモスクワを目指すとSNSで厳しくロシア軍指導部を非難した。これに対してプーチン大統領は、国営テレビで緊急演説し、プリゴジン氏が反乱を画策したと断定して、必ず氏を罰すると強調し、ワグネル戦闘員に対して投降を呼びかけた。

 プリゴジン氏がプーチン大統領とは20年来の知友として、国際社会に名乗りを上げた時から、少々怪しげな人間だと見ていた。ロシアのように管理体制が整備され、軍或いは国家組織に対してこのように批判的言動をする例は極めて珍しい。それもプーチン大統領の後ろ盾があったからこそである。他にも強硬派勢力の中には、政治団体「怒れる愛国者クラブ」を設立した参戦経験のあるイーゴリ・ギルキン氏のような戦闘的な人物もいるが、プリゴジン氏はプーチン氏が構築した体制護持を強調しながらもロシア指導層は取るべき行動が分かっていないと批判的である。

 プリゴジン氏は、戦時態勢への即時移行を主張し出した。「ロシアがウクライナで損失を積み重ねれば革命が起きかねない」と述べて、大統領に戒厳令の全国発令を求めた。これには、プーチン大統領も手を焼いていたのが実態である。

 プーチン大統領は、表向き強硬派勢力の言動を静観視している。しかし、プーチン政権の内部の動向に詳しいカーネギー財団ロシア人研究員は、強硬派勢力は穏やかに政治的資本を蓄えており、プーチン氏に対する我慢が限界に達すれば、政権に挑む可能性があるとも指摘していた。

 上記について今朝のテレビ報道で知るまでは、前記のように反プーチン的行動に火が点いたと信じていた。ところが、急転直下今暁に至って以下のように事態は収束に向かったようだ。プリゴジン氏が、ワグネルの戦闘員に対してモスクワへの進軍を停止するよう命じたとSNSで公表した。これにより首都モスクワ市内におけるワグネル部隊と治安部隊が衝突する事態は、ひとまず回避されたようだ。この舞台裏には、ベラルーシのルカシェンコ大統領が、プーチン大統領の意を受けてプリゴジン氏と長時間に亘る電話会談の末、ロシア国内で流血の事態を避けることで一致したようだ。ここにも腹に一物あるルカシェンコ大統領の仲介で、事態解決に合意した可能性がある。詳細はまだ明らかにされていないが、プーチン、ルカシェンコ、プリゴジン3氏にとって、内戦ともなりかねない事態は決してプラスにはならないことを了解したのであろう。

 しかし、反乱は絶対許さないと言っていたプーチン大統領が、その裏では直ちに事態収拾のために悪名高いルカシェンコ大統領に仲介役を依頼するとは、これまで強気一点張りだったプーチン氏に弱気の虫が巣食いだしたのだろう。盤石に思われていたプーチン体制にもひび割れが見えてきたと言えよう。

 浅はかではあるが、元々ロシアのウクライナへの理不尽な侵攻によって始まったウクライナ戦争であるだけに、このまま収まらず共倒れになって欲しかった。

2023年6月25日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com