5774.2023年6月12日(月) 国の分離独立と鎖国政策

 アメリカではトランプ前大統領が来年実施される大統領選へ準備を進めている中で、機密書類の不正持ち出しなどで起訴された。今年3月に続いて2度目のことである。こんなことは中国やロシアでは絶対有り得ないことである。仮に習近平総書記や、プーチン大統領が違反行為を行って、仮に露見しても隠蔽し、知った周囲を抑圧して逮捕されるということはまずない。それだけ民主主義国家では、個人的に政治的な力があろうとも国家警察の力は毅然としている。また、こういうことも言える。例え多少傲慢であろうとも、法に逆らうことなく、自らを外の世界へ曝け出し、自らの力を訴える逞しさが評価されることだろう。

 イギリスで昨日こんなことがあった。スコットランドのスタージョン前首相が逮捕されたとのニュースが伝えられた。前首相はスコットランド民族党の前党首でもあり、スコットランド独立運動の中心人物だった。彼女は独立運動の疑いで逮捕されたのではなく、党の資金を巡る疑いで逮捕されたもので、政治的な匂いはないと見られているが、果たしてどうだろうか。

 日本では「イギリス」と一括りにされているが、旧大英帝国はその後互いに袂を分かち、民族的、また宗教的に分裂して、現在イギリスと呼ばれているのは、グレート・ブリテン島内のイングランド、スコットランド、そして海を隔てたアイルランド島の北部の北アイルランド地方である。同じ島内のイングランドがイギリスの実権を握っているのに対し、エディンバラやグラスゴーのような歴史的な都市のあるスコットランドは、イギリスからの分離独立を志向する動きがこれまでにもあった。今回のスタージョン前首相の逮捕も必ずしも独立運動とは無関係とは言い切れない点もあるのではないかと思う。

 この種の事象が起きるといつも思うことであるが、同じ国内に民族的、宗教的に異分子が居住していたら揉めることも多いと思う。その点で考えるなら、日本は民族的にも宗教的にも際立った異分子は国内にほとんどいない。支配、統治し易い国と言えるだろう。ただ、それが観光客なら大歓迎だが、難を逃れて日本へ難民として入国を希望する外国人に対しては厳しい政策を取っている。2021年の難民認定数も日本では僅か74人しか認めていない。これは難民希望者のほんの0.7%にしか過ぎない。昨22年に増えたとは言え、せいぜい202人でしかない。日本は、世界でも類を見ない極めて少ない難民認定数と言われている。ある面で鎖国政策と揶揄されても仕方がない。

 科学学術分野のような知識人だけが競争する世界ならともかく、これまで一般社会で外国人と交流し合う機会が少ないことが、逞しさを育てることなく、外国人と伍して行ける能力を育んで来なかったと言えよう。これからの世は、日本人だけの殻の中へ閉じこもっているだけではなく、積極的に外へ出て、外の人も迎え入れる逞しさがもっと必要だと思う。

2023年6月12日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com