5773.2023年6月11日(日) 東大名誉教授のナンセンスな提言

 いま日本では少子高齢化が大きな社会問題となりつつある。昨年は女性が生涯に生む子どもの数が過去最少となり、今後これは一層大きな社会問題となる。政府も「少子化対策」を喫緊の最重要課題と掲げているが、あまり明るい展望は期待出来ない。

 この重要課題に井堀利宏・東大名誉教授が、月刊誌「選択」6月号の巻頭にナンセンスな言い分を提言している。その最大のポイントは現状の選挙制度を改定して、不条理にも若者重視の制度に変えよというのである。その具体案として、先ず「世代別選挙区」制度の導入を訴えている。「青年区」「中年区」「老年区」に分けて、それぞれの代表を選出することを提案しているのである。青年区から選出される代表が若者の意向を反映することが出来るというのである。教授は、現状の18歳では若者票がまだ足りないという考えから、更に参政権の年齢を引き下げるべきだとも主張している。その極端な例が、子どもを持つ親は、子どもの数だけ投票出来るようにして、参政権年齢を実質的にゼロ歳まで引き下げようとの乱暴な説である。生まれたばかりの子どもに1票を与え、これを親が替わって投票する。まだ考える能力の備わっていない赤ちゃんにも1票を与えるというのだ。どこからそんな無謀な発想が生まれるのだろうか。

 そのうえ以下のような身勝手な主張までしている。それは、余命の長さと政治的発言力を比例させるために、90歳の人の投票権を1とした場合、20歳の人のそれは5倍とか6倍にするというものだ。お年寄りの票は軽視し、若者の票ほど重視せよと言っているのだ。この暴論には呆れかえる。これでは憲法が保証する国民誰もが平等に有するひとり1票の権利にそぐわず、憲法違反にも該当するのではないだろうか。

 教授は若者の権利と行動を重視するあまり、高齢者の自由、平等の権利を極端に制約して、若者の投票権利を高く評価するよう訴えており、極めて理不尽だと言わざるを得ない。その前に現実をもっと直視してもらいたいと思う。若者の意見があまり反映されないことを盾に主張されるなら、その前に若者が選挙に際し与えられた投票権をきちんと行使するよう教育することの方が先決ではないだろうか。現状では若者の投票率はあまりにも低過ぎる。彼らは国民の権利を充分行使していないのだ。それが出来ないからと若者有利な手段を講じたとしても、基本を守らないで若者以外の世代層を納得させることが出来る筈がない。

 70歳を過ぎた後期高齢者の学者が、あまりにも身勝手に若者重視の選挙制度をアピールするなら、もっと若者の教育に注力し、彼らが憲法の精神をしっかり身に着けるよう啓蒙すべきではないか。日本最高峰の東大教授が、このような暴論を提言するのは軽薄過ぎると思う。こういうアピールの仕方は、象牙の塔に籠り過ぎて、俗世間とほとんど接触せず、世間を知らなすぎるが故の「学者馬鹿」であろう。

2023年6月11日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com