政府の予算案の大きな目玉である少子化対策が、今年の骨太の方針で正式に示された。少子化対策は「異次元の」と形容詞が付く。その事業費は年3兆円規模と想定されている。自民党内でも異論が出ているのは、その財源の内約1兆円を社会保障費の歳出削減で捻出しようとしているからである。当然ながら多くの反対意見が出ている。昨年10月以降歳出削減のあおりを食って高齢者医療割引率が10%も下げられた。再び減額される可能性が高い。引き続き65歳以上の高額所得者の介護保険料引き上げについても議論が行われるようだ。どうも財源はまずは高齢者への補助削減が狙われているようだ。
「異次元の」少子化対策の原案を見ると、大きな改革のひとつに児童手当の支給対象をこれまでの中学生から高校生にまで拡大することである。そして高額所得の保護者の場合は対象外とされていたが、骨太では高校生までのすべてのこどもを対象に毎月1万円を支給する。加えて3番目以降の子どもにはこれまで毎月1万5千円だった支給額が、倍増の3万円になる。ざっと目を通して見ると仮に高校生を含む3人の子どもがいる家庭では、毎月5万円の補助をいただけるという非常に恵まれた恩恵を受けられる。羨ましい限りである。
先の統一地方選で「日本維新の会」が派手な公約を掲げた大阪府では、私立校を含むすべての高校の完全無償化案の検討に入ったようである。但し、この案は私立学校側から経営上の圧迫になると反対の声が寄せられている。更に教育専門家らからも私立校の自由を奪う恐れがあると指摘されている。そもそもこんな苦情が湧くのも、中学生までは国・自治体から支給された授業料及び教育費を生徒が学校に収めているが、私立高校生については一律に大阪府が授業料として年60万円分を直接学校へ支給するため、もっと高い授業料の場合はその差額を学校が負うことになる。学校としてはその経費分が不足する。
いずれにせよ大阪府は検討段階に入ったようだが、大阪私立中学校高等学校連合会は今後、府とどうやって解決の糸口を見つけることが出来るだろうか。吉村知事の腕の見せ所でもある。
さて、G7もまずまずの評価を得て、ホッとしていた岸田首相に思いも寄らぬプライベート上の低次元の問題が引っかかっている。それは、とかくの批判があった政務秘書官の長男が、また軽率な行動によって自民党内ばかりでなく、世論の批判も浴びている。普通の大人の立場から考えれば、分かりそうなものだが、この世襲の息子には常識と非常識の境界が分からないようだ。昨年12月に岸田家の従弟同士が首相公邸内で忘年会を開いて、中には赤じゅうたんの階段上に横になっている若者がいた。昨年10月に首相の訪英に随行した際には、公用車で観光、買い物をしたと非難されたばかりである。流石に今度は言い訳も出来ない首相は、謝罪し息子に厳重に注意したというが、野党、自民党内からも秘書官を更迭すべしとの声も上がっている。その背景には、世襲政治があると厳しく指摘されている。こうした声が出ないよう政治家は、そろそろ世襲政治と縁を切るべき時期に来ているのではないだろうか。