新型コロナウィルス新規感染者が減ったと厚生労働省が判断し、今月8日コロナ対策を緩和し始めた。ところが、以後新規感染者が公表されなくなった中で、実は新規感染者は密かに増えているとの危なっかしい情報が流れている。ゼロ・コロナ対策を解除した中国でも大分再拡大しているようだ。しかし、戸外でもマスクを着ける人の数が大分少なくなってきた。現在大相撲夏場所が開催されているが、観客を見るとマスク姿が随分減ったように思える。再びぶり返されないことを切に願っている。
コロナの話題に合わせて、14世紀ヨーロッパで人口の3分の1が亡くなって黒死病と呼ばれたペストの流行が取り上げられた。ペストについては、2013年に世界で783人の患者が報告され、その内126人が亡くなったとの報告があるが、今では一部の国を除いてほとんどペストは消滅しつつあると言っても好い。
一方、かつて難病と言われたマラリアが、依然として今も世界では途上国を主に発病が見られるとの情報は些かショックである。驚いたのは、1945年終戦の年に沖縄の八重山諸島でそのマラリアが流行ったことである。旧日本軍の命令により山間部に強制疎開させられた多くの住民がマラリアに感染して命を落とした。今では日本国内ではマラリアの感染はないが、終戦時には八重山諸島全体で3,600人超の島民が亡くなった。
そこで思い出すのは、1967年に初めてアフリカへ旅した時のことである。伝染病感染防止の衛生的観点から現在と異なり予防接種が厳しく、特に医療施設や治療薬不足など感染対策が遅れているアフリカ方面への旅行ではいくつかの予防接種を義務付けられた。種痘、コレラの他に黄熱病の予防接種まで必要だった。特に黄熱病は海外旅行専門の医療所でも接種出来ず、羽田空港内の医療所だけしか接種出来なかった。それも1週間後に決められた日時に2度目の接種を受けなければならなくて、随分不便だと感じたものである。今では、アフリカへ出かけるのでも余程の不衛生な地域ならともかく、普通ではこんな面倒な予防接種を受ける必要もなくなった。蚊が多かったアジアの戦地で罹ったことがある戦友会の方々からは、度々蚊から感染するマラリアの怖さについて伺ったことがある。
そのマラリアも衛生観念が普及した今日ではほとんど発症は消えかかっているかと思いきや、今でもアフリカやアジア、中南米の一部で流行しているという。世界保健機関(WHO)によると、2021年に世界でマラリアにより亡くなった人の数は61万9千人もいたというから、まだ地球上からウィルスは消えていないのだ。コロナ感染についても流行は去ったと油断していると「一難去ってまた一難」ということになりかねないと思う。
さて、今日夕刻になって宅急便で一冊の書籍が発行した出版社から送られて来た。セルビアの友人・山崎ブケリッチ洋著「山崎洋仕事集―丘を越えて海を越えて」で、著者が贈ってくれたものである。来月15日にセルビア大使館で著者による出版記念イベントが開かれるが、大使館から招待状をいただいているので当日彼と話し合えることが楽しみである。これまで彼が雑誌や新聞に書いた幾多の文をまとめたものである。その中に私について書いてくれた一文を見つけた。「ベオグラードに響く塾歌」というテーマで、私との出会いについて母校の「三田評論」に掲載された玉稿である。これまでに読んだ文章もかなり載っているようだが、600頁を超え、価格も4,500円という大書である。読みやすそうに編集されているので、これから楽しみに読もうと思っている。