先月アメリカの週刊誌「TIME」が今年の「世界で最も影響力のある100人」のリーダー部門に日本の岸田文雄首相を選んだ。その「TIME」の5月22日・29日号の表紙と特集記事に「日本の選択」として岸田首相が取り上げられている。「岸田首相は何十年も続く平和主義を放棄し、自国を真の軍事大国にしたいと望んでいる」と紹介されたようだ。岸田首相が最近熱心に憲法改正と自衛隊を憲法上に明記することに躍起となっている様子がしばしば伝えられている。そのうえで、防衛費の大幅増額やアメリカから戦闘機「F35A」、新型輸送機「V22」オスプレイ、最新の迎撃ミサイル「SM3ブロックⅡA」など兵器購入を増やし、その前のめりの軍事姿勢を懸念していたところである。その姿勢を首相へのインタビューを通して「TIME」誌に掴まれてしまったのだ。
「TIME」は、本誌の発行前にこのニュースをウエブサイトで去る9日に公開した。その特集記事を知った政府・自民党は慌てふためいて、今日午前林外務大臣が記者会見で詳しくは語らなかったが、「表題と中身に乖離がある」と真意とは異なることを説明した。外相の語るところでは、まったくウソでもないような言い方である。「首相は我が国の置かれた厳しく複雑な安全保障環境や防衛力強化、経済政策など幅広い事項について政府の立場を説明した。結論部分では世界の分断を防ぐ歴史的な役割を担う指導者という論調になっており、記事全体として見れば説明が反映されたものと受け止めている」と述べたようだが、これでは首相が日本を軍事大国に変えると語ったことを否定していることにはならない。「TIME」が訂正文でも掲載しない限り、「TIME」を読んだ人は、岸田首相の言葉を鵜呑みにすることだろう。つまり首相は日本を軍事大国にしようと考えているということである。憲法改正が行われたわけでもなく、憲法上日本は軍備を放棄したことになっているにも関わらず、歴代首相の中で唯一岸田首相だけが日本を軍事大国にしようと期しているというわけである。
この発言がすんなり収まるとは思えない。明らかに現行憲法を無視して海外へ軍事大国として乗り出すということを宣言していることではないか。首相の真意を正しく知りたいものである。
さて、昨日雨の中を天皇・皇后両陛下主催の春の園遊会がコロナ禍の影響で令和になって初めて5年ぶりに開催された。出席者は例年の半数の約千人ほどだったが、雨が途中から激しく降り出し、女性皇族方は和服を召されてご挨拶周りをするのは、さぞや大変だったのではないかとご苦労をお察しする。これまであまりなかったことだと思うが、今年は天皇がお相手と会話をする内容が良く聞き取れた。その中で若干気になったのは、天皇がお話したお相手の言葉に若干違和感を覚え、近頃の若者らしいなぁと感じた。それは普通の会話体で行われていたが、スピードスケートの高木美帆、卓球の伊藤美誠、男子車いすテニスの国枝慎吾選手ら若いスポーツ選手たちとの会話で、「思いますので~」という表現ではなく、彼らが普段話しているのと同じように「思うので~」と言ったり、天皇が国枝選手に「フェデラー選手に見てもらったことがあります」と仰ったのに対して即座に「そうですか。ヘェー」と応えていたのが少々気になった。他にもいくつも気になる言葉が使われていたが、格別丁寧な言葉を使わなければいけないということではないにせよ、お相手が天皇でもあるし、もう少し目上の人と話す時に正しく、丁寧に話すべきではないかと感じた次第である。