今日は戦後になって新憲法が施行された日である。1947(昭和22)年の施行に先立って広く公布されたのは、前年の11月3日である。奇しくも私の8歳の誕生日だった。小学校では憲法という国の方針、ルールが決まったと担任教師から話があったことだけは覚えているが、当時はとんと関心がなかった。実際に憲法に関心を抱いたのは、53年京都市立中学3年生時代である。同年に警察予備隊が保安隊と名を変え、54年に自衛隊となり、53年7月には朝鮮戦争が停戦となり社会科の教師から授業で、憲法についてかなり具体的に教えられ、新憲法には終戦後日本は戦争を放棄して、今後軍備は一切持たないことを第9条にはっきり書かれていると教えられたことを思い出す。その折私は教師に「もし外国から攻めてきた場合軍隊がいなければそのまま占領されるが、そのままで良いのでしょうか」と質問した。はっきり覚えているが、その時教師は、そのままで良い、抵抗しない方が良いと応えられてそれ以上何も言えなかったことを今以て覚えている。その時の教師は何を考えておられたのか分からなかったが、学生時代に60年安保闘争に参加するようになって、あの時の教師の考えていることがぼんやり分かったような気がする。
残念ながら戦後自民党政権は、年を追うごとに憲法を改正し再軍備を行うことに懸命である。今ではわき目も振らずに改憲へまっしぐらである。あの改憲論者だった安倍晋三元首相が、あまりにも露骨に改憲賛成を打ち出したために、毛嫌いされ改憲の支持者が伸びなかったが、岸田現政権になってから狡猾にも表向きは如才なく振舞いながらも安倍氏以上に改憲へ向かい出した。世界最大の軍事国家である同盟国・アメリカ政府の歓心を買うべく、アメリカが望む防衛予算の大幅増額をはじめ、在日アメリカ軍経費の補助、アメリカから軍需品の買い付け、等々アメリカ政府のご機嫌取りにばかり目が向いている。その結果防衛費予算は大幅に膨れ上がった。今年度の予算は、過去最大で6兆8千億円で昨年度の当初予算と比べても1兆4千余億円も過大で、1.3倍と大幅な増額となった。向こう5年間の防衛費予算総額は、実に43兆円となり、それ以前の5年間の総額だった27兆円に比べて約1.6倍にもなっている。
現状はとうに憲法改正論議以前の問題となっており、再軍備はすでに走り出して自衛隊は明らかに憲法を冒してもう軍隊となっている。このせいか、現状容認の世論調査によると岸田政権になってから憲法改正賛成論者が着実に増え、最近の朝日新聞の調査によれば、「変えない方がよい」が55%で「変える方がよい」の37%を上回ってはいるが、これまでの自衛隊の「専守防衛」義務は、今後も維持すべきとの声が59%もある一方で、見直すべきとの声も急速に伸びており、その差は年々狭まっている。
怖いのは、防衛費予算拡大に伴って急速に取り上げられている「敵基地攻撃能力」保有について52%が賛成していることである。何が故にこのように戦争へのめり込んでいこうとするのか。戦争の惨めさは、戦争が起こる都度誰もが感じている。それでも昨今の日本人は戦争を知らない世代が圧倒的に多くなり、まるでAIで代理戦争を戦っているような感覚で戦争に悲壮感を抱かずに傍観しているだけである。それ故戦争を知らず戦争に無神経な世代が、各界に進出することが恐ろしい。せめて戦争を知る我々後期高齢者世代がこの世から皆いなくなってから、好き勝手に戦争をやってくれと皮肉のひとつも言ってやりたいものだ。