昨今話題になる少子高齢化問題の中でも、とりわけ懸念されているのは、出生者数の減少である。このままでは日本の人口は益々減るばかりである。一昨日厚生労働省が公表したデータに依れば、2070年には日本の総人口は、8千7百万人にまで減少する。しかも、その内約1割が外国人だという。70年の出生者数は、45万人にまで減るというからこのままいけば早晩国が亡びることになる。それを救っているのが、外国人の増加である。20年には総人口の2.2%しか居住していなかった外国人の割合が、70年には実に10.8%になるというから驚く。だが、こういう大事な問題を外国人を当てにして良いものだろうか。このように出生数が減少する中で、高齢者数が減るわけではない。こうなると単に日本の総人口が減ることを悲しんでいるだけではなく、多くの問題が浮かび上がってくる。その最たる問題は、働けない高齢者が増える一方で、働かなければならない働き手の数が減少することである。これでは経済も減速し、日本の将来はお先真っ暗である。
そもそも人口減少の最大の問題は、若者が段々結婚をしなくなったことが大きい。因みに女性の初婚年齢の平均は、21年から70年の間に、27.2歳から28.6歳に、50歳で未婚の女性は、15%が19.1%に、1人の女性が出産する子の数は1.3人が1.36人になり、夫婦が生涯に得る子どもの数は、1.83人が1.71人となる。そして、平均寿命は男81.58歳が85.89歳に、女87.72歳が91.94歳になる。この間の笑えない現象として、67年には、100歳以上の高齢者の人口が50万人に達して、出生者のそれを上回ることである。
以上のような将来像から、明白に見えてくるのは働き手不足である。その中でも、先ず介護業界と運送業界にしわ寄せがいく。30年代以降には、人口減少によって日本はマイナス成長に陥り、60年には世界でも突出して人口が増え続けているインドにも国内総生産(GDP)で追い抜かれるという悲観的な未来像がある。
ところで、昨日の朝日夕刊一面に紹介された81歳になる2人のアメリカ人女性の80日間世界一周旅行が大変興味深かった。介護問題ばかりが取り上げられる中で、こういう若者顔負けの高齢者のエネルギーには元気をいただける。かつて兼高かおるさんが、私が高校に入学した1954年ごろにPAN AMERICAN航空で「80日間世界一周」を実行して世間をアッと言わせて、その後長らく話題になっていた。2人の女性、医師と写真家の親友同士が5年前に計画を思いつき、日本を含む7大陸、18の国々と地域を訪れ、宿泊費の予算は1泊33㌦だったという。私が1966年と67年に1か月弱を東南アジアとアフリカ・中東を武者修行をした当時の宿泊費は1泊約10㌦(当時の外為レートは1㌦=360円)だったというからあまり変わらない。
彼女らの旅行コースを辿ってみると、アメリカ・ダラスを起点に、アルゼンチン、南極、チリ、スペイン、フィンランド、イタリア、イギリス、ケニア、タンザニア、ザンビア、エジプト、カタール、インド、ネパール、日本、マレーシア、インドネシア、オーストラリアを経てダラスへ戻っている。私は、これら18か国の内、まだアルゼンチン、南極、チリ、カタール、ネパールの5か国を訪れていない。日本では横浜と東京に滞在したようだが、日本ではマスクを着用している人が多かったことと、訪れたどの国よりも英語を話せる人が少なかったことが印象に残っているようだ。それにしても、武者修行とまではいかなくても、海外を自由に旅行したストーリーを知るとつい興味をそそられ嬉しくなる。私自身、コロナ終息後に果たして変形性関節症という症状を抱えてもう1度海外へ行く気持ちになれるだろうか。