明日は統一地方選後半戦と衆参議員補欠選の投開票日である。最後の追い込みということから朝から近くを街宣車が走り回っている。我が家は、世田谷区と目黒区の境界のすぐ近くではす向かいのお宅は、目黒区内である。そのため、世田谷、目黒区両区の候補者の街宣車が入り込んでくるし、近くには目黒区の全候補者のポスター掲示板がある。
そこでポスターを見ていて気付いたことだが、区議選のレベルでは、あまり有名人の世襲議員は立候補していないが、有名人を利用しようとする候補者が結構いるものだ。所属する政党の代表者などは佳しとして、著名タレントの学校の後輩であるとして写真まで載せている候補者もいる。少しでも票稼ぎをしたいため、なりふり構わずあらゆる得票源を拾い集めている印象である。中でも一番驚いたのは、今回目黒区議選に立候補した30歳の大津綾香女史である。今月9日に行われた神奈川県知事選に「政治家女子48党」から立候補して、長年の不倫を謝罪したばかりの黒岩祐治知事に敗れた直後に、すぐに目黒区議選に同党党首として名乗りを上げている。その彼女もポスターに元NHKアナの「池上彰氏の娘役」と書いて池上氏の知名度を利用している。明日の開票結果が見ものであるが、今や政治家が自身の能力だけではなく、否むしろそれより他の虚実入り混じった知名度や評判を頼りにして選挙に打って出るという印象が強い。これも世襲議員が親族や親戚から受け継いだ「世襲資産」をそつなく運用し安定した選挙を戦い、勝って長きに亘り議員となる根拠にしているのと同じことである。
また、こんな世襲継承者同士の選挙もある。東京台東区長選である。5選を目指していた前区長が、急死した後急遽都会議員の息子が立候補した。対立候補が元衆院議員で父親も衆議院議員だった二世議員女史である。地元民はこれをどう受け止めているのか分からないが、狭い地域でもあり、4選も経験した前区長を支持しようという流れになっていたムードも強いように思うが、果たしてどんな勝敗になるだろうか。いずれにせよ世襲継承者同士の戦いである。
一方で、明日の衆議院補選で注目を集めているのは、やはり世襲選挙である。今や世襲県とまでいわれるようになった長州山口県2区と4区の補選である。2区は岸信夫前防衛相を父に、安倍晋三元首相を伯父に持つ岸信千世氏が元議員の弁護士・平岡秀夫氏と争うが、やや有利に戦っている。安倍元首相の地盤だった4区では、元下関市議が安倍元首相夫人らの支援を得て一歩リードしているという。
こうしてみると世襲か、或いは有名人の名を借りた選挙の色がいつも以上に濃くなってきた。こうなると本当に日本の政治を良くしようとする真面目な候補者より、受け継いだ世襲資産を後生大事にミスなく政治活動を行う候補者の方が有利な時代になってきたと言えると思う。世の中のことを知らずにそれほど勉強もせず、ただ後援者巡りだけは欠かさない律儀?な政治家が、能力のある真面目な政治家より当選するチャンスが多いという情けない、ひ弱な政治構造が日本にも定着することになるのではないだろうか。