5718.2023年4月17日(月) 「チャットGPT」の効用と使い方

 いま急速にAIを活用した技術で利用が伸びているサービスがある。「チャットGPT」と呼ばれているが、IT関係者の間でも話題になっている。ちょうど大学の入学式シーズンに当たり、学長の歓迎挨拶の中でも「チャットGPT」に触れるケースが多いようだ。18世紀にイギリスで起きた産業革命にも例えられることもある。

 ただ、最初にこれを新聞で読んだ時には、こんな都合の好いものがあるだろうかと思うと同時に、これは大学生を「考えない大学生」に仕向けるのではないかと心配になったほどである。現状では、まだ開発途上のようで質問に対して正確な答を教えてくれるとは限らない。間違った回答もかなり多いようだ。アメリカのある調査会社によると8割も間違っているとの報告がある。まだ、データや情報の引き出しが少ないからではないか。

 例えば、今日の昼テレビで池上彰氏の個人情報に関して質問した「チャットGPT」の結果を紹介していたが、以下のような程度だった。カッコ内が正しい言葉である。池上彰氏は1955年(50年)に神奈川県横浜市(長野県松本市)に生まれ、慶應義塾大学商学部(経済学部)を卒業後、日本経済新聞社(NHK)へ入社して経済界を取材した(現場の取材をしたわけではなかった)。これでは、とても信頼して利用することが出来ないだろう。しかし、アメリカでは大学生が大分利用していると伝えられている。特に、レポート作成に当たり、必要な言葉や情報をインプットすれば、立派な論文が完成するというが、とても眉唾にしか思えない。問題は、今後これが多くの情報を取り入れ正確度を増して利用価値が高まれば、信頼も高まり利用者は増えることだろう。

 気になるのは、こういうサービスが、無料で使用出来て何事にも便利になる一方で、手抜きが出来るようになることである。仮に学生が論文を書くに際して多くの単語と情報をインプットして出来上がったレポートは、体裁上は問題なく合格点をもらえるだろう。だが、学生にとって一番大切な「本を読みこむ」「調べる」「ディベートする」「考える」等の作業を自分でやらずに他人任せにして、棚からボタ餅を頂戴しようというのでは力がつかないのではないだろうか。これでは「学問のすすめ」ではなく、「怠惰のすすめ」である。大学で学ぶ、特にゼミナールで学び必要な単位をいただくということは、指導教授や同じゼミナリストらと討論を重ね、その中で自分なりの考えを固め、レポートをまとめることが大事である。そういう経験を重ねて少しずつレポート作成能力も培うことが出来るようになると思う。その意味では安易にこうした手抜き用具に頼らず、ひとつの参考意見として取り入れるぐらいの考えの方が良いのではないかと思う。

 振り返って大学ゼミでは、私自身良き恩師や先輩、ゼミナリストに恵まれ、拙い卒業論文ではあったが、随分時間を注ぎ込んでそれなりに仕上げることが出来たと考えている。

 日本ばかりでなく、海外でも問題が表面化しているようで、実際イタリアでは間違いが多いことを理由に当面「チャットGPT」の使用が禁止されたし、イタリアに追随しそうな国もある。言論統制の厳しい中国については、例えば習近平国家主席について聞くと履歴などの個人情報は教えてくれるようだが、国家政策などの質問に対しては、別の質問をするようにと応答があるという。自由が許されない中国においては、有効なサービスとはならないだろう。良きにつけ悪しきにつけ、まだ半製品で発展途上にあるように思う。

2023年4月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com