5715.2023年4月14日(金) 来年度新紙幣発行に際し気になること

 来年上半期に日銀が発行する紙幣3種類のデザインがすべて変更される。デザインが変わるのは20年ぶりであるが、デザインに採用される人物はそれぞれ独自の分野で功績を上げた国民誰もが敬愛する人物である。今回採用されるデザインは、1万円札に渋沢栄一、5千円札のデザインには津田梅子、千円札には北里柴三郎が採用されることになった。

 この中でちょっと首を傾げるのは、1万円札に使用される渋沢栄一である。確かに明治期の日本経済の牽引車として、多くの事業の創設に関わり、創設に関わった企業の数が実に500社とも言われる。第一国立銀行や、東京商工会議所などの創立にも力を尽くし、日本の資本主義の父とも呼ばれている。業績としては申し分ない人物である。しかし、やや気になるのは、私生活面が少し甘く、女性関係も華やかで愛人の数も大分いたらしく、妻及びお妾さんとの間に生まれた子どもの数が20数人といわれる。80歳を過ぎてから愛人との間に子どもを儲けたと眉を顰める人もいた。経済人としては確かに類まれなほどの功績を残した。ただ、1万円札のデザインに採用され、多くの国民が使用する紙幣の顔とするには、人間的にもっと真面目で広く国民から尊敬されるような人物であって欲しいと思う。その点では津田梅子は、女子英学塾(現津田塾大学)を創設した日本の女子教育の先駆者であり、いま男女の平等化が大きな問題となっているだけに、新5千円札のデザインに採用されたのは時宜を得たと言えよう。同時に、新千円札のデザインに北里柴三郎が採用されたのも、近代日本医学の父と言われるほど初期の日本の医学界に貢献し、明治期にペスト菌を発見した。慶応医学部の創設者でもある。これら2人には、人格的な問題はまず見当たらないが、渋沢にはその点だけが気がかりである。選任者は、私生活なんて世の中の偉大な功績に比べれば大したことはないぐらいに思っているのだろうか。その代表者は、決定した時の財務大臣の麻生太郎氏だった。

 ところで、日本では紙幣のデザインがしばしば変わるが、外国ではあまりデザインが変わることはない。例えば、アメリカの1㌦紙幣は1863年以来初代大統領のワシントンである。至極当然のことではあるが、生存者がデザインに使用されると、加齢とともにデザインと本人の実物象に乖離が生まれてくる。昨年亡くなられたイギリスのエリザベス女王のデザインが英国紙幣に初めて使用されたのは、37歳の時で若くきれいだったが、そのままというわけにはいかず、64歳の時に修正された。しかし、植民地では各国とも、若い女王や実年齢に近い女王を使用したりそれぞれまちまちである。

 最も悩んだと思えるのは、タイのお札である。19歳の若さで即位された故プミポン国王が年齢を重ねるごとに新札が発行され、89歳で亡くなるまでに7度も年齢なりの国王のデザインを印刷した新札が発行されたという。

 今更渋沢栄一のデザインを別人に替えるということは無理だろうが、今後はそれら人物の業績もさることながら、人間性も充分考えて欲しいとの思いを言いたかった。

2023年4月14日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com