5710.2023年4月9日(日) 徐々に難しくなる鉄道会社の経営

 コロナ禍で経済界は大きな打撃を受けたが、中でも観光業界は行動の自粛要請などもあり旅行客が激減し大打撃を受けた。更に2020年4月政府が緊急事態宣言を発したことにより、宿泊施設や飲食業界は言うまでもなく観光地のお土産店なども多大な影響を受けた。それでも今年に入ってから少しずつ新規感染者も減少し、政府もいくつかの規制を撤廃した。この間観光業への直接的影響とは若干異なるが、首都圏の鉄道会社も大分影響を受けていた。全般的に利用客が大きく減少したが、コロナの影響が少なくなっても一度減った乗客が中々元へ戻らないことに鉄道会社は頭を抱えている。最近あまり鉄道を利用することはないが、時折乗車した時に車内が随分空いていると思ったことが何度かある。そのひとつの原因は、企業、特にIT企業などでリモートによる在宅勤務を奨励したことである。まだコロナ以前のような勤務体制には戻っていない企業が多いことである。

 乗客が減少すれば、当然ながら鉄道会社の収入は減少する。それでも経営に打撃を及ぼさない範囲内ならいくらでも対応出来るが、それが鉄道会社の収益を圧迫して赤字になるようだと鉄道の安全管理面にも影響が現れる。社有地の売却や、終電時間の見直しなど何とか経費の削減を進めているようだが、背に腹は代えられず、鉄道各社は一様に運賃の値上げの検討を始めた。そしてこの20年来運賃値上げをしなかった鉄道各社が揃って国土交通省へ運賃値上げを申請する事態となった。今年3月からJR東日本、小田急、東武、西武、東京メトロ、相鉄、西鉄、4月からはJR西日本、京阪、阪神、阪急が値上げを実施した。更に来年4月からJR東海が値上げを実施する。

 鉄道会社の経営は、本業より付帯事業の方が大変である。鉄道本業では運賃収入が収益となり、かかるコストが経費として出費され、その差が会社の利益となる。しかも現金収入で前受金であり、確実な収入が確保出来る。電車が混雑すればするだけ利益が増え、コストを抑えればその分利益が残る。鉄道会社へ入社間もないころは、駅でラッシュアワーに見習い駅員として混雑した乗客を電車内へ押し込んでいた。それが経営上プラスになったわけである。その後経理部に務めて経営の実態を多少なりとも知るようになると、本業にだけ集中すれば鉄道会社の経営は問題が起きないと知り、亡父から鉄道会社の経営は小学校を出ていれば出来ると皮肉っぽいことを言われたことを思い出す。それが、今ではラッシュアワー利用客には定期券代を割り引くとか、国交省が値上げ分と値引き分で収支を均衡させるよう求め、計画以上の利益が出た場合、利用者に還元する仕組みを作るよう要求し、かつての単純経営がそう簡単ではなくなったようだ。

 しかし、都内の鉄道駅では安全上プラットホームから転落を防止するためのホームドアを設置するなど経費の増加が著しい。その反面ホーム上に駅係員の姿があまり見られず、安全対策上チグハグな印象を受ける。かつて夢中になってホームで汗を流していたことと、下っ端ではあったが、経営の一面を見たことから鉄道経営の今昔を想い懐かしさと現代の経営の苦労を思っている。

2023年4月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com