5787.2023年3月18日(土) プーチン・ロシア大統領に逮捕状

 昨日国際刑事裁判所(ICC)は、ウクライナ戦争における犯罪の容疑でロシアのプーチン大統領に逮捕状を出したと発表した。容疑は、昨年2月の侵攻以降、ロシアが占領したウクライナから子ども1万6千余人を含む住民を、不法な移送によりロシアに連行した行為に責任があるとしている。これを欧米では評価している。ゼレンスキー大統領は、子どもの連れ去りは国家の悪だとして、ICCへ謝意を表した。EUのボレル外交安全保障上級代表は、「説明責任を果たすためのプロセスの始まりだ。われわれはICCの活動を評価し、支持する」と表明した。

 その一方で当のロシアでは、メドベージェフ前大統領をはじめ高官らが一斉にICCに反発した。プーチンと同じく逮捕状を出された子どもの権利担当のリボワベロワ大統領全権代表は、ICCが問題視したウクライナの占領地からの子ども連れ去りは「保護」であると都合良く考え、今後も仕事は続けると宣言した。ぺスコフ大統領報道官は、逮捕状は言語道断で容認出来ないと述べ、ロシアがICCに非加盟である以上決定は無効であるとの立場を示した。

 アメリカやロシアが非加盟なICCであるにしても、国際的に容認された裁判所の判断を容疑者が同意しなくとも、この判断は国際社会で広範に行き渡り徐々に説得力を持ってくる。ロシア国内では不満があろうとも、戦地から幼い子どもを連れだし、虐げたり洗脳教育を施すのは、行き過ぎと言われのも当然である。

 しかし、ロシアには、プーチンに同調した同じような軽薄な考えを抱いている御仁も少なくない。昨年10月には、国営テレビRTの司会者が、ウクライナの子どもを「溺死」「焼死」させる必要があったと番組で発言し、国内外で大きな問題となったことがある。この時は流石にロシア連邦捜査委員会も調査を指示し、RTは司会者の出演を打ち切ったことがある。ロシア国内には、こうした人道的にも許されない甘い空気があるが、それが今回ICCの裁きの遠因となったのではないかと思われる。この結果、考え難いことだが、プーチン大統領が無防備に外国を訪れるとその地の警察によって逮捕される可能性もあるということである。

 そうした非道の国ロシアへ中国の習近平国家主席が、20~22日に公式訪問することが発表された。訪問はプーチン大統領の招きによるものであるが、怪しげな匂いも漂ってくる。それは、中国がロシアに対する国際世論が厳しいこの時期に敢えて招待を受け、利のない公式訪問を行うのは、それなりの打算的な考えがあるからだと思う。現状では中国は対立しているアメリカと友好関係を強めたところで所詮何事もアメリカの後塵を拝することが分かっており、それは極力避けたい。それより一方のロシア側に支援し近寄ることによっては、ロシアを自家薬籠中のものにさせることにもなり、アメリカに対してライバルとして立ち向かえるという読みがあるのではないか。ロシアのやり方が国際社会で受け入れられることはないということは分かり切ったことである。にも拘わらず、この機に中国はアメリカの対抗軸としての立場を明確に打ち出そうとしているのではないだろうか。

 

2023年3月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com