今日から中国北京の人民大会堂で5年に1度の全国人民代表大会(全人代)が始まった。昨年10月に中国共産党大会が開催される前には、珍しく習近平国家主席を批判する横断幕が掲げられたり、若者たちが白い紙を掲げてデモ行進した。これを警戒して会場周辺では厳しい警戒が行われている。
開会の冒頭にこれを最後に首相の座から退く李克強首相が施政方針を述べた。李克強首相と言えば、首相就任当初は習近平のライバルとしてその地位を脅かすと噂されていたが、次第に飼いならされた猫のように習主席に自己主張することなく、この大会を最後に7人の最高指導部政治局常務委員からも外れ第一線から退くことになった。後任の首相には、李克強の中の1文字「克」を除いた李強氏が就任する。中国はコロナの影響により政府が掲げたGDPの伸び率が、目標5.5%をやや下回って3%に留まったが、2023年は新型コロナウィルス対策に決定的な勝利を収めたとして、経済成長率の目標を5%前後とした。更に米中関係が対立し、台湾情勢を抱えている中で国防費予算は22年の7.1%を上回る7.2%の約30兆円で軍拡の勢いを緩めない姿勢を示した。
それら予算以上に懸念されるのは、昨年の党大会で習近平国家主席が憲法で2期10年までと制約されていた国家主席の任期を、憲法を改正してまで1期延長し3期目へ入った身勝手な権力志向により、更に独裁体制を固めるのではないかと見られていることである。そして中国国内で民主的な総選挙を導入せずに、すべてを上意下達で国民を抑え込む専制君主制度に固執することである。国家体制としても覇権国家体制を益々強め、国民の声を聞き入れず、今後も国内外にむけてナチズムを継承し民主政治の欠片も見られないことが警戒される。
何故習近平は、憲法で決められた2期10年の在任期限を憲法改正してまで3期15年に延長したのか。何故総選挙制度を採用しようとしないのか。国際的にもまったく共鳴されないロシアのウクライナ侵攻に対して、どうして侵略者ロシアを支援しょうとするのか。不遜な習近平国家主席が当面考えを変えるとは考えられないが、このまま総選挙を採用せず国民の声を聞き入れようともしない独裁体制を続けていくなら、いずれ習近平ナチズムは崩壊の危機に陥るであろう。
前記のように昨年一時的に見られた「習近平退陣」要求の声は、もう盛り上がってこないのだろうか。いまの若者たちに天安門事件当時の若者たちのような行動力を期待出来ないものだろうか。一帯一路と名付けて、経済支援を口実に被援助国家のインフラを整備して相手国の国家的存立基盤を取り込み弱みに付け込むような政策をいつまで続けるのだろうか。このままでは、中国は世界中から嫌われる国家となるであろう。あまり期待出来ないが、今年の全人代が少しでも民主的な明かりが見える大会であることを陰ながら望んでいる。