5759.2023年2月18日(土) 論客・寺島実郎氏の説得力ある論旨

 あと1週間足らずでロシア軍によるウクライナ侵略から1年が経つ。そんな折某紙に日本総合研究所・寺島実郎会長の大変興味深い提言を紹介した記事が載っていた。あまり他のメディアでは拝見しない論旨である。それは、「いま世界は『全員参加型秩序』に向かっている」と言い切り、アジア諸国から期待されている日本は、その中で「アジアで戦争を起こさせない戦略構想力を求められている」そうである。歴史を振り返ってみると第2次世界大戦前まであった4つの帝国はすべて消滅した。ドイツ帝国、オーストリア・ハンガリー帝国、オスマン帝国、そしてロシア帝国である。それまでは力による正義だったが、第2次大戦後は、国連構想による世界平和の理念によりアメリカが主導する世界となった。しかし、そのアメリカも今や超大国ではなくなった。世界のリーダー役の力を失いつつある。一方、中国は国外に住んで今まで中国の経済発展を支えてきた華僑らが、強権化する習近平体制に距離を置きつつあり、いずれ中国は成長軌道を見失い、ピークアウトするであろう。アメリカ、ロシア、そして中国も世界のリーダーたる構想力や理念がない。世界は、二極ではなく、多極を通り越して「全員参加型秩序」に向かっていくというのが、寺島会長の論旨である。

 そのような世界情勢の中で、注目されるのは、これからのキーワードは「グローバルサウス」と言う言葉で表されるアフリカ、中南米、アジア、中東などの国々が台頭し、存在感が高まってくると考えられる。懸念されるのは、日本政府やメディアは米中2極の対立という見方から、ウクライナの次は台湾と決めつけ、その視点から防衛力強化に走っていることである。寺島会長が心配しているのは、台湾には米軍基地が一つもないことであり、台湾をめぐる衝突が起きれば、米軍は沖縄から出撃する。政府は「敵基地攻撃能力を持つ」と言っているが、それは取りも直さず、相手にとっての「敵地」は、当然米軍が出撃する沖縄も含まれることになり、戦争を自ら沖縄に招き込むことになる。

 そこで寺島会長の提言は、日本としては軍縮を軸とする「国連アジア太平洋本部」を設立し、それを沖縄に誘致して沖縄を戦争に巻き込んではいけないという空気を醸成すべきであると主張されている。これは、アメリカには快く思われないことであるが、アジア諸国が日本に期待しているのは、対米過剰依存から脱皮し、アジアをどうしたいのか、その構想を示し国際社会における役割を日本が果たすことではないかと主張されている。

 寺島会長のお考えは至言であり、なるほどと頷けるものである。かつて私自身「知的生産の技術研究会」(知研)で活動していたころ、度々寺島会長にお会いして、会長と知研の仲間と共著も出したことがある。当時よりその発想、構想力、行動力、啓発力などには、敬服していたが、今もこのように政府にとってはややうるさ型とも思える活動をメディアから啓発していることに脱帽するばかりである。及ばずながらも、少しでも寺島会長の卓見と言動を見習いと思っている。

2023年2月18日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com