トルコ南部とシリア北西部に跨るこの度の大地震は、今世紀でも最大と言える被害を出しており、今なお救援、支援活動が続けられ、親子3人が228時間ぶりに救出されたというニュースまで聞かれる。エルドアン大統領も災害復興を唱えているが、今の違法建築による脆弱な建造物が倒壊したことに、これらの建物の内約90%は、建築基準法が施行された1999年のイズミット大地震前に建設されたもので、法令違反ではないというようなニュアンスの説明をしたために責任逃れと非難されている。私は偶々1999年イズミット大地震(M7.4、死者17,262人)にチャナッカレで遭遇してしまった。大きな揺れはもちろんであるが、翌日チャナッカレの町で見聞した被災地の姿は生々しく瞼に鮮烈に残っている。その時今回の地震と同じように、高層建築物はパンケーキ・クラッシュ崩壊した。バス車内から外の被災状況を見て昔のイスラム・モスクが揺るぎない中で、新しいビルが軒並み倒れていたことが、強く印象に残っている。イスラム建築物は頑丈に建築され、今日にまでその形を残した。あの時、降雨によりテント内に敷かれた立派な絨毯の端が外に出て雨の中で汚れていたが、トルコ人は製品に自信を持っていて気にはしていなかったことも頭に焼き付いている。
大統領は、違法建築により甚大な被害を出したことに違法とは言えないと主張して、自らへの批判を避けようとしている節がある。そして、建物の崩壊について、責任の所在を調査するとして、すでに100人以上を逮捕している。しかし、そんなことを今更やっている場合ではないと思う。国が違法建築を見逃す環境の中で、建築業者が甘い汁を吸っていただけのことである。「大勢の命を奪ったのは地震ではない。『都市変容』という名のもとに街を共同墓地に替えてしまった人々、そしてあらゆる建築許可証に署名した人々だ」と厳しい声がある。
わが身を振り返ってトルコと同じ地震国である日本には、このような違法建築はないと思いたいが、真面目と見られている日本人にも、政治家などの言動を見ているととても安心できない。常に襟を正す気持ちが必要ではないかと思う。
さて、円安とウクライナ戦争による原料費の値上げにより、日本経済も苦しい立場に追い込まれているが、今日財務省が公表した先月の貿易収支は、実に3兆5千億円の大赤字で18か月連続の赤字である。何と単月の赤字としては、1979年以降で最大だという。これは何といってもエネルギー関連の輸入が大幅に伸びたことが大きい。輸入額の増加は、量的にはさほど伸びていないが、金額ベースでは円安が影響して石炭が93%増、液化天然ガスが57%増、原油が35%増だったことが効いている。ウクライナ戦争が続く限りいばらの道はまだ続くことだろう。