アメリカとブラジルでは、経済的、また文化的に大分開きがあると思うが、ブラジルで退任した前大統領がからんだ非民主的で暴虐行為が、アメリカと同じ軌跡を辿るとは思いも寄らなかった。事件は一昨日ブラジルの首都ブラジリアで起きた。昨年行われた大統領選をめぐる不正を訴えるボルソナーロ前大統領を支持する4千人のデモ隊が、三権の楚である大統領府、国会議事堂、最高裁判所を襲い暴れ回った挙句に建物内の器物を破壊した。警察と激しい攻防の挙句、デモ隊の1,500人が身柄を拘束された。
このデモに対して当のボルソナーロ氏は、「平和的な抗議活動は民主主義の枠内にあるが、公共施設への侵入や、破壊行為はこの原則に反する」と表向きはデモを非難したツィットを公表した。昨年10月の大統領選でルーラ現大統領に敗れ、選挙の不正を訴えていながらアメリカへ雲隠れして、デモには直接的に関わっていないと述べているが、背後で糸を引いていたと思われても仕方あるまい。
驚くのは、「ブラジルのトランプ」と呼ばれていたボルソナーロ氏の大統領在任中の言動と選挙後の動きは、アメリカのトランプ前大統領とまったく同じである。トランプ氏も2000年11月のアメリカ大統領選で民主党のバイデン現大統領に敗れるや、選挙に不正があったと自らの敗北を認めず、裁判に訴えたほどであり、21年1月に離任直前のトランプ大統領を支持するグループが無法にもアメリカ連邦議会堂を襲った。これはトランプ氏が背後で操っていたものと見られている。
とにかく例え選挙で不正があったにせよ、もう少し順法的な手段でアピールすることは出来る筈である。それが民主国家ではないだろうか。ボルソナーロ氏にしろ、トランプ氏にしろ、もっと冷静に物事を判断すべきであるし、熱狂的な保守グループに左右されたり、そそのかすべきではないと考えている。ふたりはお互いに国内で偶々多数派の支持者を得て権力を付与されたが、真からの支持者はそれほど多くないのではないかと思う。こんな低俗なお遊びをやっているようだと同盟国の気持ちも信頼も次第に失うのではないかと心配される。
さて、今日から政府が旅行代金を補助する「全国旅行支援」を再開する。コロナで散々辛酸をなめている旅行業界にとっては、天から札束が舞い降りてくるようなものだ。国内旅行のみならず、海外旅行、インバウンド業界にとっても吉となる筈である。ただ、これは前回の「GO TO TRAVEL」の40%補助に比べれば、今回の補助は20%であるので、旅行業界の思惑通り窮地を救ってくれるかどうか分からない。困ったことには中国がコロナ拡大傾向なのに旅行制限を緩和したが、各国が中国のコロナ情報を信用せず、中国からの旅行者に水際で厳しい入国規制をしていることである。中国はそれに反論して政治的だと批判し、今日になって突如日本人及び韓国人のビザ発給を一時停止すると、政治的な対抗措置に出てきた。中国はコロナ感染者数と死者数を少なめに報告していると世界保健機関(WHO)からクレームが出たばかりである。中国は現実を直視せず、姑息にも自らの都合ばかりを主張している。とても旅行の本質というものが分かっているようには思えない。相変わらず世話の焼けるお国柄である。