お正月に飲むお酒と言えば、お屠蘇である。以前はお正月3が日は必ず飲んでいたが、近年断酒をするようになってからこのお屠蘇も3日間お付き合いすべきところを2日はやらなかった。数年前からアルコールを飲むことはほとんどなくなり、昨年は正月に妻が手術で入院したので、夜6日間毎晩缶ビール1本を飲んでいた。だが、それ以外は8月末に中学時代の友人とほんのビールを1杯飲んだだけで、合わせても1年間に7回しかアルコールを飲まなかった。日ごろよりあまりお酒を飲みたい欲望が湧いてこなかったことが最大の理由である。根っからの酒好きではないということでもあろう。
こんなことを書きだしたのも、今朝の朝日新聞「天声人語」にアルコールへの欲望と酒絶ち難しの実感をエピソード交りに描いているのに興味を惹かれたからである。古来「酒は百薬の長」という諺があるように、とかく酒は肯定的に見られている。間違いを犯せば、酒のうえのミスだからと犯した過ちを大目に見るところがある。中国の詩人でも陶淵明は、「夕として飲まざるなし」とか、李白は「一杯一杯また一杯」、「一飲三百杯」という言葉を残したほど酒好きだったようだ。日本の文豪でも夏目漱石が下戸だった例を除けば、大体呑み助が多かったようだ。特に幸田露伴、太宰治、若山牧水、坂口安吾らは酒をこよなく愛したという。
かつては、私も毎晩晩酌をやっていたので、酒飲みの気持ちは何となく理解出来る。数年前までは1年中飲まない日はなかったくらいである。禁酒国であるイスラム教国を訪れても何とかしてウィスキーを持ち込み、ホテルの部屋でひとりちびりちびりやっていたものだ。それが、数年前から自然とアルコールから遠ざかるようになった。晩酌を止めたせいもある。また、現役バリバリで働いていたころは、仕事上の付き合いからしばしば飲む機会があった。今やどうしても飲みたいとの気持ちが薄れてきた。断酒は健康のためにも良い。ひところは「酒のペンクラブ会員」でもあったが、脱会してしまった。ただ、それでも縁は切れず、時折月報に原稿を依頼されると、現役の酒飲みではないが酒について知る範囲で酒に絡んだ原稿を書くことはある。
世界の「酒飲み国家ランキング」という、国民1人当たりの年間アルコール量を国別に格付けした一覧表がある。それによると上位は軒並みヨーロッパ諸国であり、上位20か国の内19位までがヨーロッパの国々である。因みに1位はベラルーシ、2位リトアニア、3位チェコ、4位クロアチア、5位オーストリアである。日本はやっと59位に入って韓国の35位にも及ばない有様で、酒飲み国とは言えないようだ。
ロシアの13位は感覚的に分かるが、意外に下位にいるのが83位の中国である。酒飲み大国は、アルコール過剰消費による様々な問題を抱えているようだ。ご多聞に漏れず1位のベラルーシでは、アルコールが原因で犯罪や自殺、健康被害が問題になっているようだから、飲みすぎはよほど気を付けなければいけない。
後期高齢者になってからほぼ20年が経っており、余生もそれほど長くはないだろう。自分自身の健康のためにも、もしアルコールを飲む機会があれば、分を弁えたうえでちょっぴり嗜みたいとは思っている。