5595.2022年12月15日(木) インドネシアのイスラム的法律改正

 インドネシアと言えば、経済的にはまだ発展途上国と見られているイスラム教徒の多いイスラム国である。1万7千余の島々から成り、人口も2億7千万人を抱える世界でも中国、インド、アメリカに次いで4番目に多い。戒律の厳しいイスラム教の国であるだけに、普通の市民生活でも日没までいかなる食物も口に入れない厳しい戒律に慣れないと日中は随分戸惑う。普通ではアルコールも飲めない。アラブのイスラム教国ほど女性用スカーフ・ヒジャブについて厳しくはないようだが、インドネシアの女性は、見知らぬ男性には素肌を見せないとされている。

 初めてこの国を訪れたのは、1967年の元旦で、以後4回ほど訪れている。最初は背後から強盗に襲われて戸惑ったようなこともあったが、インドネシアという国を知って慣れるに従い親しみを覚えた。特に意外だと思うことは、戦時中旧日本軍が侵略してインドネシアを支配していたにも拘わらず、国民の間に親日感情が強いことである。日本軍が駐留していた地域では、普通なら反日感情が特に強いと思われがちだが、そうではなくむしろ親日的であることである。駐留していた日本の兵隊さんが戦時中から現地の人たちに厳しい態度ではなく、隣組感覚で接していたからだろうと想像している。私自身初めてジャカルタを訪れた時にボゴールとの中間地点で、現地の警察署長さん家族と集落の人たちに歓迎され、インドネシア民謡の♪ブンガワンソロ♪や、スカルノ元大統領の十八番である♪愛国の花♪をはじめ、いくつもの軍歌を一緒になって歌ったことがある。もう半世紀以上も昔のことになるが、今でも懐かしく思い出す。

 ついては、このインドネシアで今月6日に刑法改正案が可決された。正副大統領や国家機関への侮辱を禁止する規定などが盛り込まれ、後段の話も含めて民主化や信教・言論の自由を後退させ、差別を助長させると早くも国内外で指摘されている。ところが、この改正案には他に大きな目的があった。何と結婚していないカップルの性交渉の禁止である。婚外の性交渉は「犯罪」と決められたのである。婚前の同棲や性交渉も禁止され、不倫なんてとても許されない。ただ、今の世の中では、男女間の交渉はかなり自由で開けっぴろげになっているので、欧米や日本などでも今どきの男女にはこの法律はとても理解を得られないだろう。その刑法改正の目的は、政治家が自分たちの思い通りに国政を運営すべく国民を抑圧して、イスラム教の教義を巧みに利用しただけではないかと思える。この法律改正によりしわ寄せは、外国人にも及ぶ。外国人がインドネシア人女性と交渉を持ったら、その外国人も罰せられるそうだから、ホテル業界などでは早くも頭を痛めているようだ。LGBTなど性的少数者などへの差別も当然厳しくなるだろう。

 イスラム教の教えは理解出来るにしても、また風紀上の取り締まりに効果的であるにせよ、あまりにも今の自由と民主化から踏み外れたやり方ではないかと、私にはインドネシアは好きな国であるだけに、ちょっとがっかりである。

2022年12月15日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com