日本国憲法第9条条文に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。第2項、前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と書かれている。
実は今政府内で来年度以降5年間の防衛関係費の予算について検討が進められているようだ。財政逼迫、そのうえすでに国の借金1,100兆円を抱えているにも拘らず、防衛費には5年後に国内総生産(GDP)の2%の支出を想定している。その額は実に概算約11兆円だというから驚く。防衛費の決定と、防衛費に対する考え方において自民党を中心とする国会議員の間では、憲法違反を行っていることにはまったく無頓着である。
第9条第2項で陸海空軍を所持しないと明確に記されているにも拘らず、日本は警察予備隊、保安隊と続くトレース上を軍備装備の現自衛隊となって大きくなっている。これは憲法違反に当たることは明白である。確かに災害出動などで自衛隊の活動は、被災者を救い、国民からも高く評価されている。国民からの評価に甘えていつの間にかなし崩し的に自衛隊は必要だとの声を定着させようとしている。しかし、これは話の筋が違うのではないか。国土の災害、人災に対して救済支援が必要とするなら、これは正面からこの問題に取り組み、国防・災害対策部門を設置すべきではないか。
日本の政治家の問題点を上げればきりがないが、その最大のものは、正面から問題に当たり解決しようとするのではなく、別のルートから、例えそれば法律に触れようとも押し通そうとすることである。そして既成事実を積み重ねることである。更に、例え反対があろうとも必要と思えば国会で論戦することもなく、政府内で審議にかけて法案を強引に実施しようとすることである。そこには、決められた法やルールを順守しようという真摯な気持ちが薄く、内々に隠れて事を進めてしまおうとの狡い考えがある。
現在日本の防衛費は世界でも8番目に多い。1987年にひとつの壁と見られていたGDP1%の防衛費を達成した途端に防衛費増額には歯止めがかからなくなった。以後時によっては、下がることもあるが、全体的にほぼ上昇傾向に向かい、近年は7年連続で過去最大の防衛費支出となっている。仮に日本の防衛費がGDPの2%になったらアメリカ、中国に次ぐ世界でも第3位の防衛大国になる。これが、憲法で武器を永久に放棄し、軍隊は保持しないと固く誓った国のありようであろうか。例え防衛費増額を決めたとしたら、その予算措置、手当はどう講ずるのか。国の財政は年々厳しく、憲法違反である防衛費を一気に増やす訳にはいかない。これ以上国民に負担を求めるような増税は出来ない。更に防衛費以外にも優先的に考えられなければならない必要経費がもっとたくさんある。
一番問題なのは、政治家が優先順位を曲げてまでも強引に自らの野望を押し通そうとすることである。そして、その手口で財源の厳しい中で憲法違反の武器、弾薬を増やすために防衛費を増額することである。彼らは、近年の中国の領海進出により、国防上の危険が迫っていると無暗に主張するが、だからと言って中国と事を構えることに一直線というのはいかがなものだろうか。その前にやるべきことを毅然としてルールに則って行うことと、法律に違反するようなことは絶対避けるべきである。こうしている間にも人目に付かないところで、こっそり背反的な行為を行っている政治家には、最早打つ手がないものだろうか。