嬉しいことだが、「あ~ぁ びっくりした!」というのが結果を知った時の率直な本音である。昨夜行われたサッカー・ワールドカップ(WC)第1戦で日本代表チームが、優勝候補の一角で過去4回のWC優勝実績がある世界ランク11位の強豪ドイツに2―1で逆転勝ちを収めたのである。テレビで中継を観ていたら開始早々見事な縦パスを受け右ライン際を駆け上がった伊東選手からパスを受けたトップの前田選手が見事にゴールを決め、幸先の好いスタートだと思ったところ、オフサイドと認定されゴールは取り消されてしまった。その後はドイツに押されっ放しで逆にドイツにペナルティ・キックを決められ前半を0―1で折り返した。試合が進むにつれて終始押されっ放しになり、後半途中で真夜中近くなったので、今日は負けたと諦め床に就いた。
ところが、今朝起きてテレビ・ニュースを観て驚いた。日本が後半に2点連続してゴールを上げ逆転勝ちしていたのだ。朝刊には、「日本、ドイツを破るー逆転2ゴール 歴史的勝利」、夕刊は「日本サッカー 新たな高みードイツ破る 優勝経験国に初勝利」と朝夕刊ともにトップ記事として取り上げている。得点の経緯を見てみると、選手交代が効果を上げ、途中から出場した選手が大分活躍して得点に絡んでいた。森保監督の機を見るに敏の名采配の賜物だろう。
恐らく同点ゴールを決めるまでは、ほとんどの日本人は負けを覚悟していただろう。日本中が歓喜に沸いたような喜びようで、朝からテレビでゴール・シーンを何度も何度も放映していた。勝てると信じ込んでいたドイツのファンは、流石に日本に負けてショックを隠し切れないようだった。これで昨日午後秩父宮ラグビー場で行われた第100回記念ラグビー早慶戦で母校慶応が、前半10―0でリードしていながら、後半逆転され13―17で敗けたうっぷんを多少晴らすことが出来た。
カタールの首都ドーハにおけるこの奇跡の勝利は、いみじくも29年前の1993年日本チームが同じこの地で味わった屈辱の「ドーハの悲劇」を思い出させてくれる。それはWCアジア予選最終戦で日本はグループ1位にあり、WC出場に王手をかけていた。それが、リードしていたタイムアップ寸前に相手チームのイラクにゴールを決められ、引き分けとなり一転して予選で敗退となり代わりに韓国が出場した。韓国とは勝ち点が同じだったが、得失点差で本選初出場を逃してしまい、日本にとってのドーハの悲劇は痛恨の極みであり、韓国にとっては天から降って湧いた「ドーハの奇跡」と呼ばれた。
爾来29年、奇しくも同じこのドーハの地で韓国が体験した歓喜「ドーハの奇跡」を日本人も味わうことが出来た。この出来過ぎのストーリーを誰が予想することが出来ただろうか。勝負は水ものである。最後まで勝敗の行方は分からないものだ。特に実力が伯仲している場合は殊更である。昨日のWCでは日本は世界ランク24位で、ドイツには実力的には大きく差をつけられていただけに、多分勝てることはないだろうと諦めかけていただけに意外感があまりにも大きく、夢物語を見ているようである。日本はこの後、同じグループの31位コスタリカとドイツより上位の7位スペイン戦を控えている。特にスペインは強豪であるが、今後の戦い方次第では、決勝トーナメント進出の希望と可能性が高くなった。しかし、簡単に諦めることを戒めると同時に、油断大敵であることも重々心しなければならないことを思い知らされた昨晩の初戦ドイツ戦の逆転勝利である。