今日11月22日は、1122の語呂合わせで「イイフウフ(好い夫婦)」の日と呼ぶそうだ。今日に限らず、いつも円満で「好い夫婦」ならそれに超したことはないだろう。「好い夫婦」の日に際し、ちょっと気になることがある。
それは2024年に現在使用されている紙幣が20年ぶりに新札に替えられ、現在のお札の人物像が、新しい人物に変えられるが、それら人物のひとりに気がかりなことがある。現在の1万円札の人物が福沢諭吉から渋沢栄一に、5千円札が樋口一葉から津田梅子に、そして千円札は野口英世から北里柴三郎にそれぞれ変更される。彼らの肖像が選ばれたのは、それぞれが果たした業績が高く評価され、偉人として尊敬できる立派な人物であると見なされたからに他ならない。毎日国民が手にするお札に人物像が取り上げられる以上、その人物は個人としての業績はもちろん、人間的にも尊敬に値する人格者でないとモラル上困る。仮に外国人からどういう人物であるかと尋ねられた時、胸を張ってこういう立派な人物であると答えられないようではお札に顔を見せる価値がない。
ところが、問題なのは、新1万円札に描かれる明治の実業家・渋沢栄一に、性格上及び家庭生活上大きな欠陥が見られたにも拘らず、最高の紙幣に登場する人物に決定したことである。
確かに渋沢が明治黎明期の日本経済界に広範に貢献したことは間違いない。しかし、私生活面においてはとても模範となるような人物ではなかった。昨年NHK大河ドラマ「青天を衝け」で主人公として取り上げられ、持て囃されたが、テレビでは1人の愛人だけしか紹介されなかった。しかし、私生活面で他にも数々のスキャンダルを演じている。因みに正式に結婚した妻は2人だけだったが、妾、愛人は数知れず、愛人との子どもの数は一説によると50人とも言われていたらしい。中には、幕末新選組隊士の女性に手を出して、新選組に襲われたという話まである。また、1866年幕臣としてヨーロッパに派遣された折には、現地の女性にまで手を出したと言われている。80歳代になってから愛人に子どもを孕ませたという生涯現役というほどの稀代の女たらしだった。ある面では世間に紹介するのも恥ずかしいくらいの人物である。世に憚られる不倫をいくつも重ね、私生活は真っ当な家庭生活を営めなかった男である。その点では、尊敬どころか、軽蔑の対象でもある。
表の世界では、実業界の父と言われ、日本資本主義の父とも呼ばれて、明治になってから日本国内に日本で最初の銀行を設立したのを皮切りに、500社以上の会社の創設に関わった経済人として華々しく紹介されている。確かに明治期の日本の経済界の発展の先鞭をつけ、牽引車となったことは疑いようがない。それでも倫理的に問題なのは、女性にあまりにもだらしなかったことである。女の経済的な面倒こそみたとは言え、これほど女性との火遊びに投資した男も珍しいと思う。こういう人物が一番高価な日本銀行券の表面にその顔を現すのは、道義上にも問題ではないかと思う。その私生活面は聊か常軌を逸していると言わざるを得ない。渋沢を1万円札の顔としていかなる基準で選出したのか、とても理解出来ない。渋沢を明治の偉人として学んだ小中学生らの幼い子どもたちが、後年になって渋沢の隠れた不倫行動を知った時、散々その功績を教えられていた彼らの気持ちはどんな思いだろうか。
渋沢を1万円札の絵柄に選んだ有識者?の判断には、大きな間違いがあったのではないかと彼らの常識をさえ疑いたくなる。